『ぼく、買うよ!』

 終了式の日の午後、教員室にいる先生たちに、私的な手作りのビラを配布した。『新採教師はなぜ追いつめられたか』の本を紹介して、私の気持ちを書いたものだ。

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 『若い仲間が、次々に今、夢を叶えようと教師になっています。ところが学校現場は、忙しさが増し、また時には心無い“言葉”が飛び交う学校が、日本の各地にあるようです。

 みなさんもご存知のように、そうした現実の中で若い先生が何人も、半年や1・2年で自ら命を絶っています。(わずか数ヶ月でも!)

 私は、この状況を何とかしたいな!といつも思っていました。

 実は、若い先生たちだけでなく、長い教師生活をへた私なんかも、やっとのことで生きて教師を続けてきた状況ですが…

 この状況を打開しようと、亡くなった娘さんたちのご両親をはじめ、心ある人たちが集まり集会なども開いてきて、ここに一冊の本ができました』

 それから、付け加えた。

『◎若い先生に、同じ仲間の一人として読んでもらいたいです。

 ◎新採指導の担当にこれからなる方などにも、是非読んでもらいたいです。

 ◎そして、今の教育現場がこのままじゃよくないと思う方にも読んでもらいたいです。

 私の机の上に、何冊か置いておきます。見てください』

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 私的なビラを配り終わったとき、じっとビラを読んでくださる方がいる。すぐに声があがった。

 『一冊ちょうだい!』お金を添えてN先生が立ち上がる。『私も買うわ』とS先生。『ぼくにもちょうだい』とJ先生。そしてT先生もすぐに声をかけてくれた。N先生もS先生もJ先生もT先生も、みんな40代や50代の先生たちだ。うれしかった。

 若い仲間のMさんも『この現実、本当ですよね。マジですよ』と言って買ってくださる。翌日、そっと机にお金をおいて本をもっていってくれたR先生も…。ありがとう! 感謝します。

 こうやって現実が少しずつ変わっていくといいな。

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 滋賀の若い仲間の石垣さんは(この本に執筆している)、20冊をあっというまに売り切り、また30冊注文したとメールでみた。そこまではできないけれど、私の学校内でも、こんなふうに買ってくださる方がいて、励まされた。娘さんたちの死を無駄にはできない。