菜の花

 昨日のこと―。雨上がりの東京を出て新幹線に乗ると、少しずつ西のほうが明るい。コーヒーを飲みながら、講演のレジメに簡単なコメントを書き入れていたら、いつの間にか静岡駅近くを走り抜けている。

 「あっ!」と思った。菜の花の咲く小さな畑が輝いて見えた。「もう菜の花の咲く季節なんだ」―。

 掛川や浜松を過ぎる頃から、青空が見えた。浜名湖は光に輝いている。豊橋を過ぎて、今度はたっぷりと畑一面の菜の花を見た。

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 少年の日、この菜の花の間に小さなドジョウたちがいて畦道を走りながらつかまえて遊んだ。菜の花は、いつしかサヤがカラカラとなり硬い種を抱えて、その実を筵の上で打った。

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 菜の花がとても好きだったので、一年生の入学式に千葉からとりよせて花の道を作って迎えた。子どもたちが式場の前から、緩やかな菜の花の道を歩いて入場してくる。その姿は、今も鮮やかに覚えている。

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 サトクリフの『運命の騎士』を読んだ。珍しく背後に二人の少年の友情が描かれている。少年期や少女期をどのように作家たちが描くか、私にはとても興味深い。