我が家の猫ライラ

 家のドアを開ける。「ライラ!」と呼ぶと、小さな声で「ニャオ」と鳴く。ケージから出してやる。夕食を器に入れる。がりがりがつがつと食べる。

 ソファに座ると近づいてきてひざに乗る。両手を突き出して、遠くを見るように、そうだ、柵にもたれて海を見るように座り込む。変な猫だ。

 12時になると、ベットの横にやってくる。白のシャム猫。人懐っこく育てられた猫だという。佐野洋子さんの『百万回死んだ猫』に登場する最後の白猫に似ている。

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 退職の日が近づいてきた。「先生、今年で最後だよね」と子どもたち。そんなこと話してないのに、どこからか知ったようだ。でも、笑って「先生はあと10年あるんだ」と答える。

 今日も給食の時間、班の子どもたちの登場する物語を話してあげた。きりのよいところで「お・し・ま・い」と言うと、みんなやわらかでうれしそうな顔をしてくれる。お話の始まりは、ちょっとどうなるかわかんなくて苦しいが、話し終えて子どもたちの顔を見ると、うれしくなる。それも、あと少しだなあ。