少年の日に(20)雨とブランコ

 軒先の張り出した横木から 綱を巻いて

 ブランコを作ったのは おじいちゃんだ

 南京袋を折りたたんですわる

 ぼくとミチルと孝と正哉が、順に乗った

 軒先の張り出した屋根に 蜂の巣の穴が見える

 節のあるあら挽きの板が 魔術のように渦をまいて

 流れていて

 それがブランコを見ていると

 近づいたり遠のいたりする

 

 ぼくの横で 雨が音をたてる

 庭はさびた土色に濡れて光る

 土壁が左にあって 

 雨はぼくらの右手でふる

 

 庭の向こうに小さな道があり

 田があり、竹やぶがあり

 もうそこからは、山の入り口になっている

 

 小さな子どもたちの雨の七月

 大人たちはどこに消えたのだろう

 ブランコが揺れる

 紫色の小さな音をたてて揺れる

 赤錆びたトタンと わらぶき屋根の家に

 白い服の花びらが舞い 雨がふる

 山も村も田も道も みな七月の雨の中だ