雪の舞う山梨で

 田中孝彦先生の都留文科大学退官、最後の講義があった。雪の舞う山梨の大月から都留に向かう。遠くの山々はまるで墨絵のようだ。近くの木々はどれもみな、根本から枝先まで白い雪でかたどられていた。

「雪の降る日のほうが、暖かいのですよ」

真木温泉で仲居さんが、咲き始めた梅の花に乗る雪を見て言った。

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 大学の2号館101の円形教室で1時から講義が始まる。臨床教育学誕生とその意味について、またそのあり方について考えさせられる。1983年出版の『子育ての思想』(新日本出版)を初めて読んでから、田中先生の本や論文をずっと読み続けてきた。田中孝彦先生の本は岩波書店や新日本出版社から多く出版されている。

 子ども観ついて、その成長と発達や生存の意味について、教師をしていく思想の土台形成など、深く影響されている。そして今は、子育てにかかわる援助職の人々の共同とその意味について…。

 講義終了後、レセプションがあり出席させていただいた。皆さんの前で『ひとこと』お話する機会があり、そうしたお話と、今日の教育が、深く子どもの人格形成の根幹に関わる問題が生じていて、そのことに早くから気づき、現代日本の課題に鋭い警鐘とコメントを続けてきた先生の理論の重みについて語らせていただいた。

 田中先生が、北海道の檜山の友人に語って下さった、わたしには忘れられない言葉がある。「山﨑さんは悩むからいい、悩みながら実践しているから信頼できる…」―。今日の教育を進める上で、厳しい現実と向かい合うとき、本当に勇気を与えてくださる言葉だったと思う。先生のさらなるご活躍を祈る。

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 ブログへの“ここあ”さんからのコメント。『ビィーチャと学校友だち』など私も読みましたよ…と。ペイトンの『バラの構図』についてもなつかしい思い出ですと書かれている。『フランバーズ屋敷の人々』を書いたペイトンのこの本について、児童書の本棚を見たら読まずに置いてあった。こんど読んでみますね。うれしいコメントです。ありがとう。