少年の日に(18


 冬の夜に

 「ゆうびん!小包みですよ」と言って

 赤い自転車が庭に飛び込んできた

 郵便やさんだ

 「京都のおばあちゃんからだよ!」

 ぼくは、うれしくて言った

宛名には、ぼくの名前が墨で大きく書かれている

 がんじょうに巻かれた荷ひもをほどくと

 美しい絵入りの箱が飛び出してきた

 華やいだ声で母さんが言う

「母さんね、百人一首、得意なの。全部知ってるわよ」

 まるで少女のよう…

 

 夜、ぼくらは炬燵に座る

 兄とぼくと弟でかるたを始める

 しばらくすると、母さんが洗物をすまして

炬燵に入り込んできた

「天つ風 雲のかよい路 ふきとじよ

 をとめのすがた しばしとどめむ」

 詠いながら、下の句の札をパンと手にする

 「ずるいよ、母さん」

 ぼくが得意な札は

 「田子の浦に うち出でてみれば 白妙の

 富士の高嶺に 雪はふりつつ」

 でも、兄ちゃんがちゃんと狙っていて取る

 悔しい!

 

 火鉢の上のなべがコトコトと音をたてる

 甘酒のいいにおい

 冷たい冬の

テレビのない小さな村の夜が更けていく