国語辞典を引きながら

  帳という漢字を教えていたら、子どもたちが次々に熟語を発表する。日記帳、電話帳、手帳、連絡帳、メモ帳…。「わあ、いっぱいあるね」と私。そのとき、V君が手を上げた。「かや…、って読むよ」

 予想外の答えに、ドキリとする。

 「V君、すごい。この字は“とばり”って読んで、寝室の周りに布を垂らしたのね。確か“かや”の場合はもう一文字使ったと思うよ」と答える。そう答えて、次の漢字に入っていった。しかし、何だか、不確かなまま教師の権威を押し付けたみたいで嫌な感じがした。

 それで、私は、教室の棚の岩波国語辞典の方に歩いていった。

 「みんな、ちょっと待って。いまV君の言った言葉を調べるから…」「か、か、かや…と。あった!『蚊帳』だ。私の言ったことに間違いはない」。ちょっと、ほっとする。同時にV君の鋭さに脱帽する。

「ねえ、みんな凄いよ。V君の言った通り『蚊帳』って書いて『かや』って読むんだよ」

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漢字学習をしていると、教師の私が予想もしないような熟語が飛び出してきて、たじたじとなる。それで、辞書が手放せない。そういうときは素直に「ちょっと待ってね、いま辞書で調べてみます…」と、そう言って、子どもたちの前で辞書を引く。子どもたちが、手元に辞書を置いて引くこともある。

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そう言えば、今日も『大豆』の食べ方の話をしていて、『いる』『にる』『ひく』という言葉があった。それぞれの意味を子どもたちに尋ねていたけれど、「それぞれの言葉には漢字があってね、面白いんだよ」と答える。『豆をいる』は『豆を煎る』でいいかな。「炒る」は「いためる」の意味だから…。『豆を煮る』は簡単。『豆をひく』は、ちょっと漢字の予想がつかないので辞書をひいた。

引く、弾く、轢く、挽く…と書いて、「あった!」。「石偏に展」を書いて石臼でひくと書いてある。「凄いよ、石臼でひくときは、この字を使うんだ。石でゴロゴロ押しつぶして平べったくなるのかな」