コンパスの術発見
2学期の終わりごろ『円と球』の教材に入った。円が点の集まりであること、紙コンパス(白の硬い紙を細長く切り取ったものに1cmづつ穴を開けたもの)を使って円を描くところまで授業していた。
3学期になって初めての算数の授業は、コンパスの使い方。
わたしの方から、使い方を教えるより、子どもたちと上手な使い方を語り合い発見しようと思った。
「この白い紙をつかって、大きさは自由、たくさんの円を描いてごらん」
スムーズに描ける子はわずか。みんな初めてコンパスを使うからぎこちない。うんうん言っている。つぶやきがもれる。
「あっ、円じゃなくなっちゃった」とGさん。
「聞いてみんな」と私。「Gさんって凄いよ。このノートを見てください。円の描き始めたところと終わりのところがずれてしまってるでしょ。それを見て、円じゃなくなっちゃったって言うんだ。その通り。線がずれてしまったときは、それは円ではないんだ。大発見だね」
「うまくできないよ」「あれ、カタツムリになっちゃった!」そんな声もあがる。思わずクスリと笑ってしまう。
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10分ほどしてから『コンパスで円を描く難しさ』を発表してもらった。「コンパスが動いちゃうの」「小さい円を描くのが難しいよ」「あのね、円の線が点々になってしまいます」「ぼくも、線が上手く書けないで上に上がっちゃうんだ」
子どもたちの困難の発表は優れている。こうした失敗や難しさを語ることを授業では大切にしたい。
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続いて尋ねた。
「じゃあね、今度は、こうしたら上手く描けたよ、ということを教えて。みんなで、3年2組のコンパスで円を描く術を見つけよう」
「あのね、コンパスをちょっと倒すといいよ」とL子。「ああ、言われちゃった」「いいよ。自分の言葉で言ってごらん、B君」「あのね、コンパスの進んでいくほうへ少し倒すと描きやすいの」「そうか、それは大発見だね」
「針の方に力を入れるといいよ」「それ、凄く大切だね」「いまの意見だけど、あまりそっちに力を入れすぎると、鉛筆のほうが上にあがっちゃうよ」
「二人の意見を上手に組み合わせバランスをとるといいね」と私。
「コンパスの上の丸いところを持ってね、クルクルくるってやるとうまくいくよ」「あっ、そうか。ぼくやってみよう」それで、みんなでやってみる。
「あのね、途中で、手を持ち変えるといいよ」「中心は変えないでね」
私は、子どもたちのたくさんの発見をほめた。それから、手首を返してひねるように書く方法と逆向きの書き方も教える。
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帰りの会でF子が手を上げて言った。
「きょうの算数が楽しかった。コンパスが難しかったけれど、みんながいろんな技を教えてくれて、少し上手くかけました」と。こんな言葉がうれしい。