始業式

 学年の先生が書いてくれた学年便りに『3学期は51日です』と書いてあった。あと51日…、ちょっと体の内側から震えが伝わってきた。今まで、まったくといっていいほど意識していなかったけれど、三学期になって初めて少し教師生活の最後を意識した。

 冬の暖かな光の中で始業式が始まる。校長の挨拶、代表児童の言葉。校歌。ぼんやりとしていた体と心が、次第に教師の体と心に変わっていく。仕事を生きることの体になっていくから不思議だ。これがなくなってしまうのも少し怖いなと思った。妙なものだ。

            ※

 朝は一番に教室にいって黒板に簡単な言葉をかいた。始業式の後、ゆっくりと一人ひとりの名前を呼び、「君のお正月はどうでしたか」と尋ねた。終わって席替えをして、体育館で遊んだ。4時間目は、作文を書く。毎年、三学期の目当てやお正月のニュースを入れた新聞づくりなどをして、教室に貼り出すが、今年はやめた。

 子どもたちは、シンとして作文を書き続ける。「書けない」とか「書くことがない」という子がいない。変わったと思う。Y君もM君もG君もW君も鉛筆をコトコト動かしている。二枚目を取りに来る。「すごいじゃない」と一言声をかける。

            ※

 帰りの会の前、M君の誕生日を祝う。肩車。M君、両足を揺すられても絶対に、私の額や体にしがみつかなかったから、みんな「おおっ」とどよめいた。

 T子が言う。「今日は、先生の誕生日でしょ。帰りにプレゼントしてあげる」「やめて、やめて。プレゼントいらないよ」と私。サヨナラした後、女の子たち数名と男の子の何人かが、私を取り囲んできた。「先生、お誕生日おめでとう!」と、言うが早いか、後ろからくすぐってくる。「わあ、助けて」と言って、逃げる。

 「先生、いくつになったの」「うん、40歳になったよ」「うそでしょう。そんなのおかしいよ。私のお父さんの歳だよ」「ごめんごめん、本当のことを言います。45歳です」「ぎゃあ、うそつき!」

 絶対に本当のことは言わないで三月を迎えたいと思っている。

※ 

 帰りの会で、L君やRさんがおねだりした。

 「先生、お願い。3年生が終わるまでに、もう一回肩車してくれないかな」。子どもたちは肩車が好きだ。