読みながら考える

 『学校の悲しみ』(ダニエル・ぺナック著)を読んでいる。日本の教育書などとは違った書き方で、静かに染みとおるように伝わってくるところと、そうでないところがあって、冬休み、一度読んだところをもう一度読み直したりしながら、コツコツ読んでいた。

 フランスの学生を教える教師の姿―いまは作家となっているわけだが…、凄く自分に似ている側面と「ああ、ここは少し違うな」という側面があって興味深い。たとえば、教室に子どもを迎える場面など、わたしは、子どもたちの存在をその日しっかりと受け止めることから、学びや生活が成立すると思っているのだが、まったく同じ指摘がなされていて彼も実践していた。そういうところや、教師が全力で、いま自分自身に集中すること、教えることに夢中になることが、子どもたちの学びの時間を作り出す最も基本的なことがらと書いている。こうした指摘などは、日本の教育書ではいままで見かけない気持ちがする。

 子どもたちの現状について、フランスの現状も書かれているが、日本のそれは、劣等生にだけでなく、「よくできる」という子どもたちも含めて、日本の子どもたちの人間的成長と発達・生存が困難と危機のなかにあるとわたしはおもっている。日本の子どもたちの前で、どのような教育を進めていくのかは、やはり、この現状を深くしっかりと捉え、わたしたち自身の手で切り開いていくしかない。

 学びの危機に対する、毅然として人間的な彼の働きかけと実践には心ふるわせられるところがあった。