少年の日に(17)試合

 「今年は勝てる!」と、誰もが言った

 村に十人の六年生がいた

 ぼくのソフトボールの腕前は、九番目か十番目

 夏の子ども会対抗試合だ

 ぼくらは優勝をねらった

 地区は十チームあって どこも優勝を狙っていたのだが…

和男君の球をぼくが受ける

 削られた赤い山肌の見える広場で、何度も練習した

 石ころがゴロゴロ転がっている

 でも、そんなのへっちゃらだった

 ポジションをああだこうだと語り合い

 ぼくもその輪の少し外に立っていた

 生まれて初めて試合に出られた

 いい試合

 初め勝っていた

 五回に逆転満塁ホームランを打たれて

 ぼくには代打が出た

 負けた…

 洋の父が、アイスキャンデーを一本ずつ配って

 「よくやった」と、言った

 ぼくらは、小さな自転車にバットやボールをはさんで

 怒ったような悲しいような顔をして 静かな列を作った

 青空をみつめるなんてとてもできなくて

 ぼくは

足元に流れる土色の景色と

リムに跳ね返る光を見つめていた

 少年の日は、熱く悲しく風に吹かれていた