あゆみ 離婚一年生 | 旅の空

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20代前半で結婚したのも早かったあゆみだが、独身へ戻った離婚一年生は、まだまだ若さ、青春ど真ん中。結婚生活に決別したからといって、それがすなわち人生の終わりなど時代錯誤も甚だしい、大仰なことは無論考えなかった。

むしろ如何にして、再度、大都会東京の水に馴染み親しめるかを模索するのに忙しかったあゆみ。

雪深い郷の両親の娘を心配する気持ちは重々承知、心からありがたいと感じていたあゆみだが、なにせ、いきなり飛び込んだ世界がファッション業界、一種特異な世界だ。おいそれと諦めるには、とても惜しい気がした。

 

結婚してからもモデル業はある程度続けていたあゆみだが、業界内での妙な慣例とでもいうのだろうか。

プライベートで嫁にいったモデルには、なぜか、仕事の声がかかりにくくなるというジンクス。

これは日本のモデル業界だけのことではなさそうなのではあるが、「その或る日」を境にして「ガクンと売り上げが落ちた」と、あゆみを抱えるエイジェンシーが何かの機会にこぼしているのを聞いてしまったあゆみ。

 

(えっ? そんなことってあるわけ?)

(家賃の高い都心に住んでいるのも、この仕事のためなのに!)

 

 

基本給などあってなきに等しいあゆみの薄給の大部分は、個別引合い、一本あたりいくらのエージェンシー主導契約後、モデルへの歩合給で構成されていた。

仕事減は、即ち、収入減に直結。

あゆみのような駆け出しモデルには死活問題であった。

それでも、基本給が保証されているだけでも、まだマシと言えたかもしれない。

外国人モデルたち、特に赤坂・六本木あたりで「ちょっとした小遣い稼ぎしてみない?」と「(ほとんどナンパに近い路上勧誘で)リクルート、スカウトされた」外人たちは、一様に観光ビザ滞在中の身の上。

そのため、法外な税率で一方的搾取同然、実入りなど、勧誘時の約束通りであろうともなかろうとも、どこへも文句のもってゆきようがない。

が、双方「遣い棄て」合意の上の取引なのだから、それもまた、非合法中の合法とでも言えたのだろうか。