産業カウンセラーの 高野 晴 です。
2月16日「プレバト!!」(MBS毎日放送)を観ていました。
今回の俳句のお題は「つまずく」
永世名人の梅沢富美男さんの俳句は、
赤チンの 膝の記憶や 養花天
季語は「養花天」で、桜の咲くころの薄曇りの空のこと。
赤チンは、マーキュロクロム液の俗称で、私が子どもの頃(50年前)も、殺菌消毒液として、怪我をしたときは必ず塗っていました。
ただ、赤チンは水銀化合物でもあり、水銀中毒の危険や公害問題もあって使用されなくなり、2年前には完全に製造が中止されました。
梅沢さんは、幼少期に貧乏人、旅芸人の子だと、いじめられたこともあったそうで、赤チンが自分を立派に育てたことを詠んだそうです。
私は、俳句の知識もほとんどありませんが、
怪我をしたときの、あの痛みとともに、
あの独特な赤チンの色、臭い、
そして養花天の頃の、うっすら寒くて、薄暗い空の情景が想起され、
とても良い句のように感じました。
さて、夏井いつき先生の査定は「ボツ」😅
理由は「本当に言いたいことが欠落している」
私は、この査定理由を見た時に、なるほど!と感心するとともに、
夏井先生の言葉に対する感覚、感性の鋭敏さに本当に驚きました。
夏井先生は、査定時には俳句しか見ていません。
梅沢さんの貧乏人等といじめられた、という解説を聞く前に、この俳句だけから、「本当に言いたいこと」が隠れていることに気が付いていたのです。
おそらくは、赤チンを使っていたのは、梅沢さんが幼少期の頃だろう。
きっと怪我をした理由は、単につまずいて転んだというようなものではなく、
「養花天」に癒しを求めるような、何か辛い記憶と結び付いているのだろう。
だから本当に言いたかったのは、その生々しい記憶こそを俳句に表現するべきだと。
夏井先生の添削は、
赤チンと イジメの記憶 養花天
読み手にそれぞれの赤チンを塗った部位があるでしょうから、
「膝」と書く必要はなく、むしろ塗ることになった原因である「イジメ」と書く。
そうすることで、
赤チンがいじめられた記憶を呼び起こすのか、
怪我をした部位から赤チンを呼び起こすのか、
養花天の空が癒すように思い出される…
夏井いつき先生、さすがです。
また、「本当に言いたいこと」というフレーズは、
カウンセラーにとっては、重要な視点です。
クライアントは、常に過不足ない言葉で、自分自身の気持ちを言語化するわけではありません。
むしろ、辛い記憶や感情は、自分自身を守るために意識下に仕舞い込んでしまいます。
言語化された情報だけで感じ取るのではなく、
言語化されない中に何かあるのかもしれない、
と問題を見立てる姿勢が大事になってきます。
夏井先生の「本当に言いたいこと」という言葉を聞いたとき、
あらためてカウンセラーとしての基本姿勢を指摘されたような気がしました。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。