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産業カウンセラーの 高野 晴 です。
人の脳には、「所持効果」とよばれる不思議な現象があります。
これは、自分が所有する物に対する主観的な価値が高まる心理的な傾向のことを指します。
言葉で書くと難しいのですが、テレビ東京の
「開運!なんでも鑑定団」を見ていれば、よく分かります。
鑑定依頼人が、
ア 〇〇の作品の特徴がよく表れているから
イ 国立博物館の所蔵品によく似ているから
ウ 大富豪だった祖父が購入したものだから
エ 慎重に検討し大金で購入したものだから
オ 借金の担保として受け取ったものだから
カ 代々家宝として受け継がれたものだから
これは本物だ、と自信満々に出品した結果、
贋作だと指摘されて気落ちしてしまう。
鑑定依頼人にしては辛いところですが、視聴者的には面白い(失礼!)。
また、同時に、なんでそんなに自信が持てるのかと、不思議にも感じてしまいます。
その謎に「所持効果」が関係しています。
なぜ「所持効果」が起こるのかについては、
- 所持しているモノに愛着を感じるから
- 所持しているモノを失いたくないから
と、ポジティブな面とネガティブな面から理由付けされています。
先ほどの理由からは、ア、イ、ウは①に、エ、オ、カは②の理由にそれぞれ関係が深そうですね。
この所持効果は、なにも骨董趣味の人にだけあるわけではなく、私達にも当然にあります。
自分が購入した商品、入学した学校や職業(会社)、選択した恋人や結婚相手、住居や不動産、投資した株等の銘柄などなど・・
思い当たることもありますよね(笑)。
所持効果が、常に経済学的に正しい判断にも役立つのであればよいのですが、残念ながら、「開運!なんでも鑑定団」を見てのとおり、時にとんでもなく大きな過ちを犯すことがあります。
例えば、次のような事例で考えてみます。
Aさんは、半年前に5000円で購入したワインが、今なら2万円で売れることが分かりました。
Aさんは、その評価に驚きつつも、クリスマスに開けて美味しく飲みました。
このときAさんの立場で考えたとき、コスト的には、どう感じるでしょうか。
統計的には、
「今なら2万円するワインを5000円で購入できたのだから、1万5000円儲かった」と嬉しく感じる人が約25パーセントなのだそうです。
投機目的で購入したわけでもないワインが、たまたま値上がりしたわけですから、そう判断しても、決しておかしいわけではありません。
しかし、経済学的には、5000円で仕入れ、2万円の価値があるワインを、みすみす無価値にした、ということから、「2万円損した」という結論になります。
所持効果を含めて、人は常に経済学的に冷静で正しい判断に基づく行動をしているわけではないことは、知っておいてよいのかもしれません。
(以上、池谷裕二著「脳には妙なクセがある」(新潮文庫)を参考)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。