産業カウンセラーの 高野 晴 です。
カウンセリングでは,自分の立ち位置からの視点からだけではなく,相手の立ち位置からの視点でも考えてみるということも効果的なことがあります。
さて,将棋の上達法に「三手の読み」というのがあります。
自分が一手目をこう指す。すると相手が二手目をこう指す。そしたら私が三手目をこう指す,
ということを考えて一手目を指しましょう
ということですね。
なかでも最も難しいのが,二手目の相手の指し手を読むことです。
自分が一手目をこう指したら,相手はこう指してくれるだろう,では二手目を読んだことになりません。
相手は,自分にとって最も嫌で困るような手を選択するはずですから,
自分勝手な視点からだけでは,二手目は正確には読めないのです。
つまり,相手の二手目の指し手をしっかり読むためには,
相手の立ち位置からの視点で考える
ということがとても大事なのです。
カウンセリングの中でも,クライアントの立ち位置に立たず,自分勝手に「多分こういうことだろう」と考えていると,肝心なことを見落としたりすることがあります。
先日も,仕事で失敗して上司から怒られて落ち込んでいる,という相談がありました。
最初は,「よくあることじゃないか」と思いつつ,よくよく聴いてみると,こんなことを語ってくれました。
その仕事は,もともと知識もなく難しいと感じていましたが,その上司が『君ならできる!』と任せてきたので,それならばと引き受けたのですが,やはり失敗してしまった。
するとその上司は,手のひらを反すように無能呼ばわりして非難してきた。
というものでした。
それは理不尽だわ! 悔しいわ! 落ち込むわ!
まずは,このクライアントの視点をしっかり受け止めないと,次に進めません。
さらに,三手目は,相手の二手目が指されたときに,自分が指す手になりますが,これは自分の立ち位置からの視点だけではなく,客観的な第三者の立ち位置からの視点が入ります。
繰り返しになりますが…
カウンセラーは答えを教えることはしません。
クライアントの立ち直る力を信じて,意識や行動の変容を促すだけです。
したがって,カウンセラーとクライアントの双方の視点だけでなく,第三者的な立ち位置からの視点を得ることで,クライアントにとっても,受け入れやすい気づきや解決策が発想しやすいものになります。
これは,クライアントにも,
何があって上司は今回君にこの仕事を任せたのだと思う?
何があって上司はそんなに厳しく君を叱ったのだと思う?
上司の上司や職場の先輩ならばどんなことを言うと思う?
どこを直したら失敗を回避できる可能性があったと思う?
などと第三者の視点から一緒に考えてもらいます。すると…
上司の「君ならできる」の言葉は期待ではなかったのか。
上司は啓発的な経験のチャンスをくれたのではないのか。
叱られたのは成長等を期待しての激励ではなかったのか。
失敗は知識不足ではなく相談や報告不足でなかったのか。
仕事に活用できた有用なリソースがあったのではないか。
これらを習得できればレベルアップできるのではないか。
それが分かればいちいち落ち込まずに済むのではないか。
落ち込まなければ相談する無駄もなくなるのではないか。
などと,気づきや新しいアイデアが出てくることもありますよね。
「三手の読み」は,将棋や囲碁だけではなく,カウンセラーにとっても,心掛ける視点だと思います。
しかしこれができれば,私(棋力5級)も将棋は有段者なんですけどね…😅
最後までお読みいただき,ありがとうございます。