夜中に一度目覚める前まで、それはそれは幸せな夢を見ていた。夢と言うよりは過去の幸せな出来事のあれこれを思い出していたと言うべきか。
結婚して新築マンションを買った。5階建ての5階で、エレベーター無し、でも若かったから平気だった。とにかく景色が良くて、高台に建つマンションの、しかも最上階からは、札幌の街並みが自分の庭の様に見渡せるばかりか、晴れた日には遠く石狩湾やその向こうの山並みまで、絵葉書の様に見えるのだ。
やがて娘が産まれ、こんなに幸せな人生が私にあるなんて、まさに夢のように思っていたものだ。
幸せな気持ちのまま、再び浅い眠りについた。そこには、今の私と同じ32歳になった娘がいて、今にも泣き出しそうな顔で、私にこんな話をした。
「明日の朝早く、私を逮捕しに警察が来るの。私に業務上横領の嫌疑がかけられていて、でも私はやってないの、無実なのに。だから、今夜は一人で何か好きな物食べに行っても良い?しばらく食べられないと思うから」
私はもちろん驚愕して、一緒に食事したいと申し出た。けれども、明日の早朝から家宅捜索があるかもしれないので、お母さんは掃除をしておいて欲しいと言われ、それもそうだなと思ったのだ、何せ夢だから。
次の場面では、娘が地獄の底からやっと這い出したような顔で私の前に立っていた。翌朝になっていて、すでに警察が迎えに来ている。
「昨日は何を食べたの?」
私は間抜けな質問をする。そこが1番大事なのか?
「結局、何も食べられなかった。食欲もないし、胃が受け付けない」
「せっかくなんだから、何か美味しい物食べれば良かったのに」
いや、そんな場合じゃないだろう。
娘は暗い顔のまま、「じゃ、行って来る」
と言い残して、走って外に飛び出して行き、パトカーではなく、タクシーに乗って行ってしまった。
私は大声で娘の名前を呼び、泣いた。さっきまでの幸せな気持ちは何処へやら、胸が締め付けられて、苦しくて苦しくて、とにかく泣いた。娘の名を呼ぶ自分の声で目が覚めた。1日のうちに、いや、ほんの数時間のうちに、幸せと絶望とが交錯した。いや、夢なんだけどね。
結婚して新築マンションを買った。5階建ての5階で、エレベーター無し、でも若かったから平気だった。とにかく景色が良くて、高台に建つマンションの、しかも最上階からは、札幌の街並みが自分の庭の様に見渡せるばかりか、晴れた日には遠く石狩湾やその向こうの山並みまで、絵葉書の様に見えるのだ。
やがて娘が産まれ、こんなに幸せな人生が私にあるなんて、まさに夢のように思っていたものだ。
幸せな気持ちのまま、再び浅い眠りについた。そこには、今の私と同じ32歳になった娘がいて、今にも泣き出しそうな顔で、私にこんな話をした。
「明日の朝早く、私を逮捕しに警察が来るの。私に業務上横領の嫌疑がかけられていて、でも私はやってないの、無実なのに。だから、今夜は一人で何か好きな物食べに行っても良い?しばらく食べられないと思うから」
私はもちろん驚愕して、一緒に食事したいと申し出た。けれども、明日の早朝から家宅捜索があるかもしれないので、お母さんは掃除をしておいて欲しいと言われ、それもそうだなと思ったのだ、何せ夢だから。
次の場面では、娘が地獄の底からやっと這い出したような顔で私の前に立っていた。翌朝になっていて、すでに警察が迎えに来ている。
「昨日は何を食べたの?」
私は間抜けな質問をする。そこが1番大事なのか?
「結局、何も食べられなかった。食欲もないし、胃が受け付けない」
「せっかくなんだから、何か美味しい物食べれば良かったのに」
いや、そんな場合じゃないだろう。
娘は暗い顔のまま、「じゃ、行って来る」
と言い残して、走って外に飛び出して行き、パトカーではなく、タクシーに乗って行ってしまった。
私は大声で娘の名前を呼び、泣いた。さっきまでの幸せな気持ちは何処へやら、胸が締め付けられて、苦しくて苦しくて、とにかく泣いた。娘の名を呼ぶ自分の声で目が覚めた。1日のうちに、いや、ほんの数時間のうちに、幸せと絶望とが交錯した。いや、夢なんだけどね。