流れ着いていたのは3人

そう、人間である。

動物は数回あったが人間、まして生きているのは初めてだった

 

ボートからのそのそと出てきた

1人は自分より年上だろうか

残りは自分と同じか何歳か下であろうと思えた

 

「…こんにちわ」

こちらから声をかけてみた

「あ、こんにちわ。よかった・・・人がいる」

安心した顔をしている

そんな表情なのは見てすぐ理解できた

そして

主人とは違った雰囲気だが美人という言葉が似合う人だった

残る2人は・・・疲れたのか元気がないようにも見えた

 

「あ!こ、こういうものです・・・」

持っていたバッグから一枚の身分証を取り出して見せた

「ありがとうございます」

名前くらいしかわからなかったが

それを見ている間に足早ではあったがここまでのことを説明された。

学校の先生であること

2人はその生徒と友達であること

ボートに乗っていて遊んでいたまではいいが流されてしまったこと

 

「助けはそのうち来るでしょう・・・さて館までご案内します」

「ありがとうございます。たすかった・・・」

 案内されるまま向かう。

そして・・・

「ずいぶん大きいですね、何人くらいで住んでいるんですか?」

「私とご主人様の二人です」

見上げるくらいには大きい館を前に、それらしい質問をしてしまった先生と

冷静に答えるメイド。

「こんな大きい館なのに・・・。 ??」

なんで人いないんだろうというよりは一人で全部やってるのかな、すごいなというのが先に来ている。

少し変な視線も感じたがたぶん気のせいだろう。

「・・・では、お入りください」

メイドがドアを開け、通してくれた。

 

「あら、志保。お客さまかしら?」

「はい。流されたようで・・・」

入るなり主であろう人物が目の前にいた

「すみません、助けが来るまでお邪魔させてください」

「いいのよゆっくりしていって。志保、館を案内して差し上げて」

館へ入って早々ではあった1階から3階からなる館を1階から順々に説明してもらった

窓越しから見える庭や畑、外の様子も説明してくれた

そして、自分(先生)たちの部屋は2階。

 

さあ3階も全て周り終える時だった

 

「こちらから先はご主人様の許可がない限り“絶対”に立ち入らないでください」

 

3階の一番奥の通路前でこう説明された

今までと目も声色も違って怖いとまで感じるほどキッパリと。

畏怖しながらも、そうだよな大事な部屋くらいあるよねと納得するしかなかった

「わ、わかりました。この子たちにもよく言っておきます・・・」

疲れた様子の生徒たちも大きい建物の中に入ってから少しだけ元気な顔色をしていた

遊ぶには絶好の広さ。単なる好奇心。疲れよりワクワクのが強かったのだろうか

果たしてこの子たちはどれだけ説明された内容を覚えているのか・・・先生が一番不安だった。

 

「メイドさん?メイドさんは奥の部屋に何があるかご存知なのですか?」

「いえ、知りません」

強く言われたから知っていると思っていたが答えは意外なるものだった

「そ、そうなんですね・・・メイドさんにまで見せないなんて・・・」

「ご主人様の命令は絶対ですので・・・いいと言われるまでは私も見れません。」

うつむき気味にそう話す。

「あ、そこまで詮索するつもりもなかったのよ。あはは・・・この子たちと部屋で休ませていただきますね」

興味本位でついつい聞いてしまった・・・ここの部屋は忘れよう。

そして自分たちの部屋へとメイドと共に戻る

 

「では、お食事の準備が出来ましたら呼ばせて頂きますのでそれまでごゆっくり」

「いろいろありがとうございます・・・」

深々とお辞儀。

ドアを閉める寸でで

「お着替えが無いと思いますのでそちらも準備しておきます。それでは・・・」

ほぼほぼ手ぶらで流されたようなもの。

着替えなんてものあるわけもなく・・・

何から何まで気が利くメイドさんだなと感心しつつ教え子たちにもう1度館のあれこれを教えておく

特に3階。

それからこれといって変化はなく気が付けば夕飯になっていてもいい時間だった。

 

コンコン・・

「お食事の支度が出来ましたので食卓までどうぞ。」

「はーい!」

メイドから案内がきた。生徒を連れ食卓まで。

メイドは主を呼びに行っていた。

 

目の前に広がったのは野菜中心ではあったが品数豊富な料理たち。

「すごい・・」

「ふふ、今日からお客様がいるから張り切ってるわね・・・さ、食べましょうか。」

後ろから現れた主人

どこか誇らしげだった。

メイドを除き、みなでテーブルを囲んでの食事

学校行事ならどれだけ楽しいことか・・・などと想いを馳せる

「ごちそうさま。志保あとはよろしくね」

「・・・」

軽く頭を上げる。

「あ、メイドさん。片付けなら・・・」

「大丈夫です。お疲れでしょう、もうお休みください」

言われるがまま休むことに。

お風呂に入り、着替えやベッドメイキング

何から何まで客人扱い

こうして遭難初日が終わるを迎える

 

でも次の日になり事態は急変した。

朝食にいたはずの生徒の友達がいない。

昼になれば・・・と思い騒がずにいたが昼食になっても来なかった

「メイドさん、この子の友達をどこかで見ませんでした?」

「いえ、館の見回り、庭の手入れをしていたので最後どこで見たかは・・・」

「主人、知りませんか?」

「かくれんぼでもしてそのまま寝ているのでしょう・・・心配でしょうが、探す前にご飯にしましょうか」

「・・・そうですね。食べたら館と周りを見させてください」

探すにしても体力が必要になる。まずは目の前に出されたものを頂くとする。

ただ気になったのは昨日と違って肉料理が並んでいる

たまたまと言えば聞こえはいいが、家畜的な動物はいないようなものだったしどこから出てきたのやら・・・

 

「今日はお肉があるんですね。やはり日によって献立もいろいろと?」

「いえ、めったにお肉は出せません・・・特別です。」

「そ、そう。あの子にも食べさせたかったな」

軽くメイドと会話を挟みながら食事をすすめていく

味は良かったと思う。“探さなければ”と逸る気持ちが強すぎて食に対してこんな感じしか浮かばなかった

食事を終えすぐに捜索に出た。といっても館と島だから夜までには見て回れた

でも居なかった、足を踏み入れてないとすればあそこしかなかった・・・