汗にまみれたキャンプの成果を惜しげもなく披露した。7回。右翼ポール際に白球を放り込んだ中西が胸を張る。「飛距離は十分だと思った。しっかり打てた」。一塁手での登場ながら、本職は激戦区の外野だ。納得の一撃が、し烈な“戦争”をさらに激化させた。

 多村や柴原の実績組は4日の楽天戦から出場予定。若手にとってのアピール機会は限られる。右翼を守った長谷川、左翼に入った中村もヒットを放ち、井手は代打で右前打。「詰まっても、バットの先っぽでもいい。とにかく打ちたい」。地元宮崎出身のプロ8年生は生き残りに必死だ。

 競争に身を置く選手からのアピールは、秋山監督にも届いている。「争いが激しいからね。この調子でドンドンいってほしいよ」。キャンプからオープン戦に舞台を移して、激烈度は増す一方。2年目の中村が目をぎらつかせた。「どれだけ食らいついていけるかですね」。待ったなしのサバイバル戦に突入だ。
勢いは本物だと証明する一撃だった。初回1死。カウント1-0からの2球目、小松の真ん中低めスライダーをバックスクリーンにたたき込んだ。「ひっかかった感じだったけどよく飛んでくれた」。新生秋山ホークス“第1号”を放った前日に続く先制弾。両手に残った感触を笑顔で振り返った。

 続く第2、3打席ではいずれも先頭で安打を放ってチャンスメーク、さらに四球も選んで前日から7打席連続出塁とした。「ホームラン2本はたまたまです。とにかく出塁にこだわりたい」。フォーム修正に成功した打撃を生かすため、足にも磨きをかけてきた。

 昨季のパ・リーグ盗塁王、西武の片岡が手本だ。日本シリーズ第7戦、死球で出塁した直後の二盗で逆転を呼び込んだ。「片岡さんはノーアウトから走る」。昨オフは東京都内でロッテの西岡らと自主トレ。片岡も同じ場所で練習していたため、走り姿の残像を目に焼き付けている。そのイメージ通り3回は初球で走るなど、この日も2盗塁を記録した。

 今キャンプではスライディングを改善。回り込むように伸ばしていた右足を、真っすぐ前に出せるよう練習してきた。効果はさっそく表れた。紅白戦で盗塁を7回試みたうち失敗はわずか1回。「これまで際どかったタイミングをセーフにできるようになった」

 守備でも見せた。5回2死一、三塁の場面で栗原の大飛球を好捕。飛び上がってフェンスを右手でつかみながら、ボールをグラブに収める超美技だった。もっとも6回には広瀬の打球を判断ミス(記録は二塁打)。井出外野守備・走塁コーチは「早く前に出過ぎて打球を抜かれた」と注文する一方で、多村、柴原らベテラン勢と比べて「差はだんだん詰まってきている」と成長を認めた。

 毎年のようにキャンプ、OP戦序盤で活躍しながら、開幕と同時に失速する印象だった。昨季は打率・089と屈辱の数字も残った。「昨年は打撃が嫌になったけれど、今は打席が楽しみ」と気持ちも前向きになっている。今度こそ“春の珍事”とは言わせない。

 「おい、2月男! 」。試合直後、森本の冷やかしに「もう3月や」と応戦。チームメートが待つ移動バスに乗り込むと拍手がわき起こった。「多村さん、柴原さん、アギーラに勝つには、していかないと」。走攻守すべてにおいて素質を開花させたプロ6年生が、確かな手応えとともに定位置奪取を誓った。
ヒット1本の選手もいますが、ここに名前の挙がってる選手はアピールするしかありません
多村・松中は外野の一角をほぼ手中にしていますし、さらにアギーラ・柴原といます
レギュラーを獲るのは大変だと思いますが、主力が衰えてきたから入れ替わったのでは
チーム力は大きくならないですからね
この1ヶ月で結果を残して、首脳陣を悩ませる選手になって欲しいですね