強行出場の主砲が「0」行進にピリオドを打ち、打線を活性化させた。前日に右ひざに死球を受けた松中信彦内野手(34)が「不死身ですから」とスタメンに名を連ね、6回に24号ソロを放った。今季最長の連続イニング無得点を「32」で止め、7回の逆転劇を呼び込んだ。ホークスは2位をキープ。左翼の守備にも就いたまな弟子に、王貞治監督は笑顔でうなずいた。

 痛む右ひざに負担をかけなかった。敵地の制空権を支配して、松中が悠々とダイヤモンドを回った。6回1死。「試合に出ずに負けるのが、一番悔しいから」。強行出場の主砲が、天敵を自信喪失させた。実に33イニングぶりの得点が、6日ぶりの勝利を呼び込んだ。

 集中力を極限まで研ぎ澄ました。「初回と4回も同じ球で同じことをやられたから」。狙い通りの初球の内角スライダーを力で粉砕した。右中間席に飛び込んだのは、4試合ぶりの24号ソロ。ベンチに漂い始めた敗色をきれいに一掃した。

 志願の強行出場が実った。前夜はダルビッシュから右ひざに死球を受けて病院へ直行。この日の出場も危ぶまれたが、診察の結果は打撲。「骨さえ大丈夫なら出る。そうでもしないと、流れは変わらない」。深夜の病院で覚悟は決めていた。

 王監督も松中不在を想定し、2種類のオーダーを準備。打撃練習では右足に体重をかけられない状態だったが、武田勝と相性がいい田上をDHで起用するために、8月17日以来の左翼守備にも就いた。「今は得点力が落ちているので田上の力が必要です」。7回の逆転劇は、その田上の左中間二塁打から始まった。

 試合前は「痛むし、打ち方も分からないけど、最後は気持ちです」と漏らした。武田勝には前回対戦まで12打数1安打の打率・083。試合後は「きょうはダメもとでいった。強引な一撃? 足が痛いときは強引にいった方がいい」と笑った。

 2位集団が空前の混戦を続ける中、連敗なら日本ハムに並ばれる危機だった。「一つ勝つのはしんどいが、松中がよく頑張った。これぐらい苦しい思いをしても、勝てば流れを変えられる」。前夜は宿舎で野手ミーティングを開き、選手を鼓舞した王監督もチームの変化を確信した。

 札幌入りした1日、松田ら後輩が通算300号の祝賀会を開いてくれた。その思いに応えるには先頭でチームを引っ張り続けるしかない。松中も「負ければ今月で(シーズンが)終わる。クライマックスシリーズ(CS)に出られるように頑張るだけ」と言い切った。

 天敵を攻略し2位を死守した。武田勝とは今季3勝2敗。通算では3勝7敗だが、天敵のイメージもかなり薄らいできた。自らを「不死身ですから」という言葉で奮い立たせ、痛みにも耐えた一振り。CSからの日本一へ向け、意義あるアーチだった。 
シーズン終盤、体力的にも厳しいものがあるとは思いますが
まだシーズンが終わってしまったわけではないですし
松中だけでなく、選手全員が優勝に向かって
モチベーションを高く持ち、頑張って欲しいですね!