平成22年3月29日(月)、数日前が霰混じりの冬かと思いきや、ほのかに暖かくなりこれ幸いと表に飛び出したぞy。

「春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎは少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる・・・」有名な『枕草子』の一節ですが、春は人をじっとさせてはおかない。

伏見区南浜町の濠川その1

伏見区南浜町の濠川その2

伏見区南浜町の濠川その3
タカナは弾むように伏見城の外堀であったとされる伏見区南浜町の濠川沿いを散策しておりました。このあたりは有数の造り酒屋があり、幕末には薩摩藩邸や坂本龍馬が寄宿していた「寺田屋」があったあたりでごわす。

お目当ての「寺田屋」と称する旅籠の周囲は平日にもかかわらず、大勢の観光客で賑わっておりました。大型バスが狭い道に入ってきて「おお危な・・・」、まずは中へ入っていきましょうか。

「坂本龍馬」のお馴染みの写真があっちこっちと掲げてあります。一枚「四千円ですか」高いですna。

「坂本龍馬」のお馴染みの写真
階段の上がりしなに「近江屋」で生死をともにした「中岡慎太郎」の凛々しい写真が・・・この人は抜群の行動力で龍馬と共に「維新回天」へと尽力した割には人々の関心がうすい。可哀想ですne。

「中岡慎太郎」の凛々しい写真

そして、長州の傑物、男前「桂小五郎=木戸孝允」のプリントもありました。

「桂小五郎=木戸孝允」のプリント
ここまでは驚きもしない志士たちの顔ぶれでしたが、ある一枚の写真を見て、妙な違和感を覚えました。それは薩長土肥の面々、勝海舟、近藤勇など幕末のオールスターが勢揃いして記念写真に収まっているという、どこで撮ったかいかがわしいものでございました。

いかがわしい幕末オールスター写真その1  
なぜなら、このスター達は敵味方に分かれて戦っており、一堂に会して写真に収まるほど各々暇ではなかった。肥前の江藤新平・大隈重信と龍馬の接点はありません。わずかに桂小五郎などが彼らと接触したくらいでしょうかne。佐賀藩の鍋島直正(閑叟)は戊辰戦争直前まで官軍につくか態度を明らかにしなかった殿様です。

いかがわしい幕末オールスター写真その2 人物配置図
左から勝海舟、中岡慎太郎、江藤新平、桂小五郎、大隈重信、小松帯刀、副島種臣、五代友厚、坂本龍馬だとさ・・・そうそうたる顔ぶれ。人を馬鹿にしている。

蟄居の身であった勝海舟もしかり、死んだはずの高杉晋作が一緒など・・・不自然なことばかり。こんないい加減なもの(合成写真か?)をぬけぬけと張り出して歴史を歪曲しているのを見過ごすわけにはいきません。

「寺田屋」の嘘とホンマ、化けの皮をはぐ訪問になろうとは思いもしませんでした。京都市東山区にある「霊山歴史館」とは比べものになりません。

・「寺田屋」の女将だった「お登せ」の写真は本物で何処かのコピーでしょう。

「お登せ」の写真 
・お龍が裸で幕吏の襲撃を知らせ龍馬の危機を救った話は有名ですが、その時入ったとされる木製風呂桶は、昭和の時代でも使っていたような物で下がセメント敷きでござる。ばかばかしいですna。

お龍が入っていたとされる湯殿、棺桶みたい。

・再建した物件に「寺田屋での刀傷跡」とはごまかしも甚だしい。しかも鳥羽・伏見の戦いで焼失してしまった建物に残っているはずがありません。

「寺田屋での刀傷跡」と称される、いかがわしきもの。

・大河ドラマ『龍馬伝』で龍馬の父親役をされた俳優、児玉 清さんがここを訪れ記念写真におさまっている。これは本物でしょう。

俳優、児玉 清さんがここを訪れた時の記念写真

・「寺田屋騒動」の数日前に、龍馬を描いたとされる肖像画は怪しい。そんなこと一々するはずないやん。どうせ昭和時代かそれ以前に誰かが写真を見て描いたのでしょう。

「寺田屋騒動」の数日前に、龍馬を描いたとされる、いかがわしい肖像画

・勝 海舟の尽力で建てられたとされる神戸海軍操練所の写真は本物のコピーかどうか分かりません。

神戸海軍操練所とされる写真

「世の人はわれを 何とも言はばいへ わがなすことは 我のみぞしる」龍馬の名言です。コメントするまでもありません。

龍馬の句碑

現在の旅籠「寺田屋」その1、歴史資料館とすれば良かったのに。

現在の旅籠「寺田屋」その2

それでは現「寺田屋」に関するウィキペディアでの評価をそのまま記載しておきます。

現在の寺田屋の建物は明治38年(1905年)に登記されており、特に湯殿がある部分は明治41年(1908年。お龍はその2年前に病没)に増築登記がなされているなどの点から、専門家の間では以前から再建説が強かった。
2008年になって複数のメディアでこの点が取り上げられ、京都市は当時の記録等を調査し、同年9月24日に幕末当時の建物は鳥羽・伏見の戦いの兵火で焼失しており、現在の京都市伏見区南浜町263番地にある建物は後の時代に当時の敷地の西隣に建てられたものであると公式に結論した。・・・

【参 考】司馬遼太郎作『龍馬がゆく』全8巻、『酔って候』(文春文庫) 、『坂本龍馬がゆく』文藝春秋増刊、ウィキペディアなど。

歴史は過去に遡れば遡るほどいかようにも解釈できる。様々な説や文書類が巷間に出回ることは避けられない。しかし、出任せの虚言類を見過ごすわけにはいきません。文献類を読むだけでなく。実地見聞を怠らぬことでしょうか。