ー第18話ー

目抜通りをぬけて、路地裏に入ると、

表札がぽつんとあるだけの商売っ毛のないお店


『一品屋 BAR 高宮』


このお店に通うことになって、

不思議なことばかりある。



      

たった5席のカウンターだけのお店。

それも、真ん中の席は、

ほとんど、

キジトラの猫ちゃんが陣どっている。


それが、

不思議と癒しの空気感ある。



赤シャツのマスターは、

その猫ちゃんの通訳役のようで、

その気持ちを教えてくれる。


時々キジトラがマスターで、

マスターが猫に感じることがある。




「久しぶりですね」

「この前のケイコさん・・・」

「素敵な方だったでしょ♪」



グラスを磨きながらのマスターのほうが嬉しそうである。





「今日はスペシャルですよ」
と、和牛が目の前に。

「和牛の焼きじゃぶですよ」
「お塩で楽しんでください」


お塩は、
沖縄の糸満沖合いの約2000メートルからの海水だけで作られたものらしい。

お肉の味も、
冷酒の味も引き立つ。


赤シャツのマスターが、
「どこにでも売ってますよ♪」
と言って見せてくれた。



それ以来、
僕も買ってすっかりファンになっている。

マスターが、
「パスタもこのお塩で茹でてますよ」と、
種明かしっぽく。


「今日は僕だけですね」と、話すと。

マスターが目を細めて、
首を横にふって、
その目の先には、
キジトラ君の隣に、かわいい猫ちゃんが二匹。

満席である。

その二匹は、
双子らしい。


恋に落ちそうなほどチャーミングか猫ちゃん。


その日も、
すっかりと心地よく酔っぱらってしまった。


マスターが3杯めから出してくれた、
自家製の焼酎が格別においしかった。


マスターが、
「マタタビ酒は、今夜だけですよ」


マスターも僕も、
キジトラ君も、
チャーミングな彼女と、
みんなで話が盛り上がってしまった。

ニヤー♪ニヤー♪
ゴロゴロ♪
ニヤー♪ニヤー♪
ゴロゴロ♪



また、
お店には、
貸し切りの紙がヒラヒラと。


翌朝、
会社で事務員に笑われてしまった。

スーツのズボン!
お尻のところ。
丸い穴があいてる。

ニャンとまぁー!

つづく