あ〰 今日も そろそろ 閉める時間かしらね



ママ お疲れ様でした

では 私は この辺りで上がりますね



しかし お腹が空いたな


今日は 3つ奥の 小料理屋のカウンターで


少し 食べてから 帰ろうかな



いらっしゃい


好きなところに座ってください



私は 


カウンターの 中間に座る事にした


なんとなく


気持ちの良い 風が


入り口の 開けているドアの のれんを


通り抜け 店内に 吹いてきたので


無意識に 目をやった




のれんの 向こう側の


のれんの 隙間から 


見覚えのある  ちんどん が見ている



ところが 私と目が合い


あ 見つかっちゃった マズイという顔をして


しずしずと そのままの姿勢で 


後ろに下がり 帰っていったようだった





ちんどん とは


昔 働いていた 店の 常連客で


どちらかと言うと


風あたりが強い お客さんだった



けれど 一度 お酒を口にすると



店の中央付近で 踊りだし



あんたも 一緒に 良かったら



踊らない?



なんて 昔 チンドン屋していてさ



こんな感じで よく 商店街を



踊って回ったもんだよ



くったく無く 笑って



私に 何か 飲んで良いよ



と 伝えた



その頃 すでに



大人用 オムツを履いて



体調悪いのを 無理をしてまで



飲み歩く客として



色々な店を渡り歩くので



私の 新しい店のママも 知っていた



けれど ママの歓迎するお客では無く



丁重に あしらわれて 帰っていく日を



何度か 目にしていた




前の店に 私は 定期的に 通い



ある程度 高額な 金額を 支払う事で



今までの 恩義をお返ししていた




そんな折



昔のママが話す



ちんどん さぁ



死んじゃったんだって



確かね



三か月前くらいだって



最後は 部屋で 動けなくなるくらい



その状態でも 飲んで



部屋中 トイレに行かずに



散乱していたみたいよ 



凄い 悪臭で それは それは



大変だったみたい





え?




私 つい 先日 ちんどん 見ましたよ?




何かの間違いじゃないですか?



私は 笑いながら その日の様子を



話すと



ママが いや 部屋を見た人が



発見してるから 本当のはなし





それにしても



あんなに くっきり はっきり



お化けって 見えるもんなんですね




お化けに なった ちんどんは



それでも



とにかく 飲み足りなくて



一件 一件 馴染みの店を



のぞいて



気付かれないように 座り



店の中央で 踊り



その店のお客のお酒を 一緒に飲み



楽しく 過ごしていたのかもしれない



気付いてしまって ごめんな ちんどん







実話です





フロムおぢさん