今W杯の欧州予選、南米予選を見れる範囲でいくつかチェックさせてもらったが、
南米予選に注目するならば、エンターテイメントとしてはブラジルvsチリ戦とは比較に
ならないほどレベルが落ち、戦術面におぴて見るべき点は皆無であったが、
スリラーとしてはウルグアイvsコロンビア戦を一番面白く拝見した。
試合を面白くさせた最大の誤算は、私がウルグアイを薄っぺらの結果至上主義的な
戦い方しかできない連中だとたかをくくっていたことが見事に裏切られたからだ。
結論として勝敗を分けた決定的な要素は、単に所属クラブからもらうギャラの差である。
しかもその高いギャラをもらう連中が前線でポジションを流動的に入れ替えるのだから、
コロンビアはたまったものではない。選手個人に視点を向ければ、中盤のビアファラは
縦横無尽にピッチを駈けずりまわり、周囲を好印象に見せ付けながら、彼のいない
スペースをウルグアイに狙われていたことは興味深い。そのぶん、注目株のエルキン・ソト
やアンヘルの近くでプレーするべきモレノが守備に追われるのは当たり前である。
ならば屈強のDF陣はいったい何だったのかというと、ウルグアイの連動性のある攻撃に
しばしば戸惑い、最初は相手からの縦へのパスにゾーンでポストプレーを阻んでいた
コルドバ、ルイス・ペレアのCBも徐々に対応が甘くなり、特にコロンビアの両SBは徹底的に
狙われた。フィジカルで衰えを感じるベドージャは再三にわたり相手の侵入を許し、
相手右SBのグスタボ・バレイラの攻撃参加に先述のソトが応対せねばならなかったのは問題だ。
それでもクロスを入れられれば、ホキ・ジュニオール並みのDF能力しか持たないルイス・ペレア
では何もできない。彼は前には強いが横に致命的な欠陥を持つDFである。さらにジェペスが本来
担っていた「口撃力」ができていない。コルドバは南米の中でも比較的フェアな方だ。ペレアは
自ら汚れ役を買うことを嫌い、衰えの見られるベドージャのフォローを拒否した。これでは
屈強なDF陣は構成できない。よって、ウルグアイのルイス・ガルシア、ディエゴ・ペレスの疲れを
待つまで、チャンスは訪れなかった。バイタルエリア(takam16はそれをデリケートゾーンと言う)を
余裕を持ってドリブルできる機会を得てからのコロンビアは一気に2ゴールで追いついた。
ソトのゴラッソとアンヘルの頭は相手の疲れと交代選手が試合に入りきれなかった結果に
起きた起こるべくして起きた事件であった。2-0の魔力とも言うのだろうか。
しかし、大事件は終了間際に起きた。それはまたまた左サイドのベドージャ、ルイス・ペレアの
綻びからのものであった。

戦前の個人的な興味は、「マリオ(ジェペス)」と「パオロ(モンテーロ)」の化かしあいだった。パオロは
どちらの意味でも期待大だった。彼は3回に1度は致命的なミスを犯し、今回もあった。
一方で、彼の統率力は捨てがたい。マリオの「口撃力」と両足タックルはエンタメ性に溢れているが、
色紙も多い。個性派対決が見たたっかった私にはいささかしょっぱい試合だったのかもしれない。
さて、いずれにしろ、コロンビアはプレーオフ進出が精一杯だろう。しかし臆する必要は全くない。
なぜなら首都ボゴタの2600mの標高で試合を行えば、オーストラリアはイチコロである。
ただし、もう後がないからといって、かつてアルゼンチンが見せたようなマラドーナの復帰まばいの
茶番はやめてもらいたい。以前、地元開催のコパ・アメリカで優勝したコロンビアは、直後の
アルゼンチン戦で、アスプリージャ、リンコンといった時代遅れの面々を招集し、大敗したことが
ある。コリア・ジャパンに行けなかった汚点の1つである。
しかし、しいて召集するのであれば、それはバルデラマのカツラであろう。
かつてルーマニアがワールドカップに勝ち進んだ褒美に全員金髪にしたことを肯定するわけでは
ないが、もしもバルデラマのカツラを11人全員に装着させることができれば、再び魅惑的な
芸を堪能できると確信しているのは私だけであろうか。

 by 細木「セルジオ」慎太郎