子供の頃から、ゲームならば壮大なストーリーを楽しめる
ロールプレイングゲーム、
アルバイトをするなら短期より長期、
TVだったら2時間モノより、連続モノ、
そして、読書だったら短編モノより長編モノ。
じっくり長く楽しめることが好きな僕の本棚は
1巻2巻とか上下巻が妙に多い。
上中下なら即買いだ。

山崎豊子さんの小説は、そういった超のつく長編物が魅力のひとつ。
彼女の著書で最近読んだ小説といえば、そう、

「華麗なる一族」

こちらも上中下巻とじっくり長く楽しめる。
テーマは社会派で難しい。
「白い巨塔」は国立病院が舞台。そして
「華麗なる一族」はズバリ、銀行である。

万俵大介は関西に基盤を持つ中堅の阪神銀行の頭取。銀行といえば、
昨今合併やら統合やらで何かと騒がしいが、そのことが購入へ向かわせた
のかもしれない。物語の阪神銀行は頭取主導のもと、緻密な計画を練りながら
銀行の吸収合併計画を練る。でもそんな内容なら他を当たればもっといい本にも
めぐり会えるかもしれない。
しかし、本書の魅力は別の部分に潜んでいる。なにしろタイトルは
「華麗なる一族」。
万俵大介には妻がいる。息子がいる。娘がいる。
つまり、ポイントは家族であり、家族それぞれの思惑がこの
「華麗なる一族」の行方を良くも悪くも左右する。
親しければ親しいほど、憎らしさも倍増する。
ワンマンな人物には味方は多いが敵も同じくらい多い。

万俵一族をさまざまな視点から描きながら物語は壮絶な展開へと
進んでいきます。超長編というものは最初の1巻できっかけをつかめれば、
どんどん深みにはまります。銀行などお堅い話も、人間関係が
複雑に絡み合えばなぜだかソフトに受け入れられる、
なぜなら人間がらみのストーリーは我々が当然人間である限り、
自身にもありえることだと考えることができるのです。
「華麗なる一族」は庶民には到底考えられない生活です。頭取や社長
の気持ちなどなったことのないものにはわかりません。
しかし、未知の世界に足を踏み入れても、所詮は人間。考えることは
同じです。
生活のギャップへの驚きの一方で人間くささたっぷりの万俵一族。
そして彼らを想像を絶するストーリーへと導く山崎豊子さんには大ぞっこん。
著者がおそらく新しい作品を出すことはもうないかもしれません。
しかし、著者の作品に遭遇したことがないのであれば、無理にでも
出会うことに決して損はないはずです。

なお、本書は大変多くの方が読まれており、映像でもご覧になった方は
多いはずです。発行されたのは35年程前になります。しかし
一度も読んでないならぜひともオススメしたいという1冊でした。