『Hold Me, Thrill Me, Kiss Me, Kill Me』U2 歌詞の和訳 | Football, Guitar & Music

Hold Me, Thrill Me, Kiss Me, Kill Me
U2

You don't know how you took it


You just know what you got


Oh lawdy, you been stealing from the thieves


And you got caught


In the headlights of a stretch car,


You're a star.


 

あんたは知らないんだ、あんたがどうやって手に入れたかを
知っているのは、手に入れたものだけ
なんてこった、今まで泥棒から盗んでたなんて
あんたは捕まっちまうよ
リムジンのヘッドライトを浴びてね
あんたはスターさ

 「泥棒から盗んでた」の部分。アルバム『Achtung Baby』の「The Fly」にある、「Every artist is cannibal. Every poet is thief. All kill thier inspiration. Sing about the grief」(どのアーティストも共食い。どの詩人も泥棒。インスピレーションを殺し、嘆きを歌う)にも似ている。ロックバンドも、アイディアを順繰り順繰り盗み合っているということか。『ボノ語録(スーザン・マリック著、シンコーミュージック)』のロックンロールの章には、「芸術はどれも人工的に作られたものだ。ミュージシャンはいつでも呪術師もしくは魔術師なんだ。昔は手の内を見せなかったけれど、今はどんなふうにトリックをかけているか見せているのさ」と、似たような言葉がある。
 「you got caught」の部分。捕まるのは、警察のお縄になるということなのか。それとも、ヘッドライトを浴びながらなので、ファンやマスコミに捕まるという意味か。
 「You’re a star」の部分。Youは「あんた」と訳した。一歩引いて見ているような感じで、「あなた」や「きみ」よりは、しっくりくるように感じた。「おまえ」にすると強すぎる。

 


Dressing like your sister


Living like a tart


If they don't know what you're doin'


Babe it must be art,


You're a headache, in a suitcase


You're a star.

あんたの妹みたいに着飾って
だらしない女のように生きる
あんたのすることを、もしみんなが知らなきゃ、
アートになるだろうね
あんたはスーツケースに入ってる頭痛の種
あんたはスターさ

 「tart」は俗語で売春婦という意味がある。「sister」と韻を踏みながら、片や清純・片やふしだらなという表現のようだ。「If they don't know what you're doin' Babe it must be art,」の部分。ファンや観客は、うわべの生き様を見るだけで判断するという意味か。先ほどと同じく「Achtung Baby」の「Even Better Than The Real Thing」に、「We’ll slide down the surface of things(オレたちは物事の上っ面を滑っている)」がある。ロックバンドやスターは、表面だけを取り繕って、周りがそれを「あれが芸術だよね」と言っているということか。

Oh, no, don't be shy


You don't have to go blind,


Hold me


Thrill me


Kiss me


Kill me.


 

恥ずかしがらなくていい
目が見えなくなったりはしないさ
抱きしめてほしい
ゾクゾクさせてほしい
キスしてほしい
殺してほしい・・・

 「Hold me・・・」の部分。曲の表題にもなっている。抱きしめて欲しいのは、今まで「あんたはスターさ」と語っていた人が主語なのか。「殺してほしい」という言葉が入ると、スターへの倒錯したような狂ったような愛情を意味しているのか。英語版のWikipediaを読むと、バットマンの映画のために書いた曲のようだ。バットマンに登場するのは、狂気の沙汰の人物ばかり。それを表しているのか。また、「妹のように着飾り」という部分を元にすると、「あんた」は女性のはず。男性ファンが、女性のスターに対して、「オレを殺して欲しいほど好き」と思っているということか。『ボノ語録』の、「名声ゲーム」の章には、「文字通り、俺んちの庭で死のうとやって来る人もいる」と、ボノ自身が語っている。

 


You don't know how you got here


You just know you want out


Believing in yourself almost as much as you doubt,


You're a big smash


You wear it like a rash


Star.

あんたは知らない、どうやってここへ来たか
知っているのは、逃げ出したいことだけ
自分を疑うのと同じくらい、
自分を信じている
あんたは大ヒットさ
ただれた肌のように身にまとう
スターさ

 「ここへ来た」けど「逃げ出したい」。「自分を疑う」けど「信じている」。「大ヒット」だけど「ただれた肌のよう」。と、反対を意味する歌詞。ロックバンドやスターの不安定さや、成功も転落も紙一重な様子を表現しているのか。

 


Oh no, don't be shy


You need a crowd to cry,


Hold me


Thrill me


Kiss me


Kill me.

恥ずかしがらなくていい
大声で泣くときはは、見てくれる観客が欲しいんだろう
抱きしめてほしい
ゾクゾクさせてほしい
キスしてほしい
殺してほしい・・・

They want you to be Jesus


They'll got down on one knee


But they'll want their money back


If you're alive at thirty-three,


And you're turning tricks


With your crucifix.


You're a star, oh child


 

みんなは、あんたを神様にしたいのさ
膝をついて祈るだろうね
でも、自分の金は戻ってきてほしい
あんたが33歳まで生きてるなら、
それに、金のためにサービスするなら、
十字架と一緒にね
あんたはスターさ

 『ボノ語録』の「芸術はどれも人工的に・・・」の隣に、「ポップ・スターに現ナマをしこたまやって、それで彼が自滅するのを拒否したら、勇気のない奴だなと思うよ。それが取引の一部なんだから。33歳になる前に十字架の上で死ななかったら金を返してくれと俺なら言うだろうね」というボノの言葉がある。ボノ自身から、ファンとスターの「取引」という言葉が出てくるのは、面白いなと思う。『ボノ語録』バンドの章には、エルヴィス・コステロに「君はロープの上を歩いている。誰も渡ろうとしないロープ」とある。君は何度も落ちてるよねと指摘され、「うまくいくかもしれないんだ」と答えている。スターであるなら、ありたいなら、勇気を見せろよということか。
 まだ読んでいないのだが、『U2魂の歌を求めて(スティーブ・ストックマン著、岳陽舎)』には、宗教的な解説が多く紹介されているようだ。私自身にとっては、キリストやキリスト教の深い部分は、良く分からない。これから学んでいきたい。

 


Of course you're not shy


You don't have to deny love,


Hold me


Thrill me


Kiss me


Kill me

もちろん、あんたは恥ずかしくないよ
愛を否定しなくてもいいのさ
抱きしめてほしい
ゾクゾクさせてほしい
キスしてほしい
殺してほしい・・・

 『“U2”: Faraway So Close(B.P. Fallon著)』に、この曲は「ロックバンドであること」「スターであること」を書いたとあるようだ。英語版のWikipediaに紹介してあるものの、洋書なので手を出していない。

 

 ミドルテンポで急がず、バンドとして自分たちの創作に自信があふれているように思われる。みなさんも、ぜひ聞き込んでみてください。