野菜だけでなく肉や魚も買ったので、急遽保冷バッグと氷を調達したがおれの家にまっすぐ帰ることになった。
「明日が楽しみ~」
「ふつーの、簡単に食べれる料理しか作らないですよ」
「いや~、オレ、何にも作れないからさ。
料理できるってだけでも尊敬する」
今朝のフレンチトーストもうまかったし。
期待大です、と櫻井は嬉しそうに笑う。
・・・そんなに、嬉しそうな顔、しないで。
餌につられているの?
何らかのキモチがあるんですか?
・・・でも、何も聞けないままに自宅アパート前に。
「じゃあ、失礼します」
「ああ、お休み」
共同エントランスのガラス戸を開けたが、後ろは振り返らなかった。
・・・そこに櫻井がいるのか、それともいないのか。
おれのことをどんな顔をしてみているのか、それとも用はすんだとさっさと発車させているのか。
現実を知ることが怖かったから。