「か、買いすぎた・・・」
ビニール袋も使わず、新聞紙でぐるぐると巻かれた野菜たち。
もちろん一人で食べきれるはずもない。
そんなおれを見て櫻井はおかしそうに笑っている。
「大丈夫、オレが食べるから」
「食べに、来る、とか?」
「え!いっていいの!」
喜びを隠さず前のめりの櫻井に、いやいや、やめてくださいというのが精いっぱいだ。
・・・だって、片や超高級会社激近マンション。
片や自分は乗り換えして片道40分のアパート。
新入社員で収入額が違うとはいえ、櫻井を快く招き入れることができる心境にはなれない。
「べ、弁当、とか?」
「本当?作ってくれるの?!」
「や。お昼だと、僕の中身と駄々被りしてるのがバレちゃうので、夕飯用を、朝、出勤前に届けるとか」
「お、それいいね!」
櫻井はとてもうれしそうに笑った。