ただでさえ会社近くの金持ちマンション。
にも拘わらず、櫻井はRV車を車庫から出してきた。
「たまには乗らないとバッテリーもあがちゃうしな」
櫻井は鼻歌を歌いながら高速道路を運転してゆく。
「・・・・・・」
ランドクルーザーのような大きさはないけれど、周りを走る乗用車からはタイヤ半分くらいは車高が高い。
見えてきた景色に櫻井はご機嫌だったが、おれは落ち着かなかった。
「ど、どこまでいくんですか・・・?」
「混んでなければ鎌倉まで。
無理なら横浜ぐらいなら行けそうかな?」
出発時間が遅めだったということもあり、道はかえって鎌倉の方がすいていた。
大雨の後のため漁には出られなかったそうで、生しらす目当ての観光客の足が遠のいたようだった。
鎌倉野菜を使った隠れ家のようなカフェでランチをした後、地元野菜が買える市場へ連れて行ってもらった。
色が違うにんじんに興味が沸き、それぞれのおすすめレシピを聞きながら、作り置きのメニューを組み立てる。
「お、この魚うまそう」
「この肉、焼くだけでもおいしそう」
元来食べることが好きだという櫻井の声を聞いていたらついつい食材を買い込んでしまった。