もう一晩櫻井の家のソファで過ごし、翌朝は平日の起床時間に目が覚めた。

こっそり寝室の様子を見てみたら、今朝は呼吸の荒さも取れて穏やかにねむっているようだ。

すこしほっとして、調子が良ければバスルームを使うかもと考え、浴槽を簡単に洗った。

 

洗面所周りをざっと整え、タオル類を洗ってたたんだものに交換してゆく。

 

洗濯は着替えてから回せばいいかと考え、部屋の隅に立てかけられたフローリング用のワイパーをかけた。

 

 

「お、はよ・・・」

「!あ、課長!おはようございます。

体調どうですか?熱、測りますか?」

「あ、ああ」

 

リビングに姿を見せた櫻井につぎつぎと言葉をかけながら世話を焼く。

 

「松本。帰らなかったんだな」

「・・・一度、帰りました・・・・・・」

 

そういえば、櫻井は家に帰れと言っていた。

上司である櫻井の命令だったとしても、昨日の状態で置いて帰ったとしたらいつまでも心の呵責にさいなまれていただろう。

 

「・・・怒ってるんじゃない。

ありがとな」

         

うつむいたおれの頭を軽くぽんぽんとなでると「風呂入ってくる」と言い残して櫻井はリビングを出て行った。

 

 
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