櫻井の部屋に戻り、暖かいタオルを3本作ると寝室へ入る。

櫻井は眠ってはいなかったが、先ほどよりもぐったりとして目を開けることもつらい様子だ。

 

「課長、ホットタオル作ったんで、顔とか拭きますね」

 

顔や首筋を拭ってやると、少しだけ険しい顔つきが緩んだように見える。

別のタオルに変え、背中や足、脇などを順に拭いていくが、呼吸の粗さまで和らげることはできなかった。

 

 

 

「もっと熱が上がるかもしれないから」

 

ポカリを氷と水で少し割ったもので薬を飲ませ、ベッドへ横たえる

 

「・・・はぁ、・・・はぁ。かぜ、ってこんな、きつかったっけ?」

櫻井は弱音を吐いた。

「なんか、食べた方がいいんだろうけど・・・」

「いま、はぁ・・・ムリ・・・」

「ですよね・・・」

 

納得すると同時に、この家には鍋もフライパンもないことを想いだした。

 

(ああ、ど~しよ。おれんちだったらあるのに・・・。あ、そうだ)

 

「課長、1時間ちょっと待てますか?

ちょっと家行ってきます」

「・・・。うつすと、いけない。・・・から、いえに、はぁ・・・かえれ」

 

 

 

 

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