櫻井の部屋に戻り、暖かいタオルを3本作ると寝室へ入る。
櫻井は眠ってはいなかったが、先ほどよりもぐったりとして目を開けることもつらい様子だ。
「課長、ホットタオル作ったんで、顔とか拭きますね」
顔や首筋を拭ってやると、少しだけ険しい顔つきが緩んだように見える。
別のタオルに変え、背中や足、脇などを順に拭いていくが、呼吸の粗さまで和らげることはできなかった。
「もっと熱が上がるかもしれないから」
ポカリを氷と水で少し割ったもので薬を飲ませ、ベッドへ横たえる
「・・・はぁ、・・・はぁ。かぜ、ってこんな、きつかったっけ?」
櫻井は弱音を吐いた。
「なんか、食べた方がいいんだろうけど・・・」
「いま、はぁ・・・ムリ・・・」
「ですよね・・・」
納得すると同時に、この家には鍋もフライパンもないことを想いだした。
(ああ、ど~しよ。おれんちだったらあるのに・・・。あ、そうだ)
「課長、1時間ちょっと待てますか?
ちょっと家行ってきます」
「・・・。うつすと、いけない。・・・から、いえに、はぁ・・・かえれ」
![](https://ssl-stat.amebame.com/pub/content/9477400408/amebapick/item/picktag_autoAd_301.png)