停電は復旧したらしいのが雨はまだ止まないらしく、雨脚の強い中再びずぶ濡れになる覚悟ができなかったのと、「夜遅くなったから泊まっていけよ」という課長の言葉に甘えることにした。
「さすがにベッドをお借りするわけにはいきません。
僕はソファで十分です」
「シーツは変えるから大丈夫だって。
それとも、一緒に寝る?」
「寝ません!」
クリーニングされていた毛布を渡され、恐縮しながら「クリーニング代は払う」と伝えても、「将来有望な部下が遭難しなくてすんだから気にすんな」と言って課長は寝室の扉を閉めた。
「泊ってよかったのかな・・・」
リビングのソファの上で、毛布にくるまりながらつぶやいてみる。
クリーニング済の毛布をわざわざビニール梱包を開けて出してくれたということは、オフシーズンだからなのかも。
そして、予備の寝具がないと、ということは泊まりの来客や親しくしている同僚や付き合いのある友達がいない、ということなのかもしれない。
「。寝室を一緒に使うなら、必要ないか・・・」
そう、ナニをするなら、必要ない・・・
「ってやめやめ。くだらないこと考えるの」
相手は自分の上司にあたる人だ。下種な想像はもってのほか。
それに、若干自分の体の奥底に火が付きそうな予感に頭をブンブンと振って考えを紛らせた。