明日も平日だ。
松本を遅くまで拘束するわけにもいかない。
お互いに、本当に一杯だけ酒を楽しんで店を後にすると、駅へと向かって歩いた。
俺はこの駅から直接地下鉄に乗るが、松本はもう少しだけ歩いた先の路線だ。
「じゃあ、お疲れ様でした」
松本がペコリと頭を下げ、その先へと歩みを進める。
「ちょ、っと。待って!」
思ったよりも小さな声しか出せなかったが、松本は振り返ってくれた。
「?櫻井先輩?」
「さっき。」
「さっき?」
「『ずっと好きでした』って言ってくれたけど。
なー、それ。過去形?」
ちょっとだけ考えて、松本はふるふると首を振った。
「今日、久しぶりに会って・・・
やっぱり、先輩のこと・・・」
そう言葉が途切れると、ジワリと涙ぐんだ。
「俺は、あの日。
ちゃんと松本に言わなかったこと後悔してる。
・・・なあ、俺たち、あの時のキスからやり直し、できないかな」