「ふう・・・」
シャワーを使ってからお湯の張られた浴槽に入る。
周りは停電しているのに、このマンションは一切無縁のようだ。
電気も使えるし、風呂の湯もシャワーも問題なく使えている。
マンションも、外部との関りが最小限にされているような、豪華さと閉鎖的の両面を持ち合わせた、少しだけ違和感が沸き起こってしまうそんな建物だったけれど。
・・・今の状況で風呂に入れるのは正直ありがたかった。
あんまり長湯をしても心配をかけてしまうだろうと思い、早々に上がったのだが。
さっき床に置いたバスタオルとスーツ一式は消え、着替えになりうるものは何もなかった。
ランドリーボックスの中にそれらを見つけたけれど、今更ずぶ濡れの衣服を着る勇気は持ち合わせていない。
仕方なく棚に置かれたグレーのバスタオルを体に巻き付け、恐る恐る脱衣所を出る。
左右に広がった廊下を見渡し、先ほど自分がくぐった玄関とは逆の方へと歩き出した。