早い季節の台風が、発生しこちらに向かっていると週初めの天気予報が伝えていたが、日を追うごとにますます勢力が大きくなり、本格的に何らかの対策をしなくてはと考えているうちにとうとう直撃日を迎えてしまった。

 

安藤さんは、お子さんが保育園も小学校も早い段階で休校になってしまったので有休をとっていた。

他の先輩方も直行直帰やテレワークになったいたので、その日の夕方、同じフロア―にはまばらな人影しかなかったし、営業一課に最後まで残っていたのは俺と櫻井課長だけだった。

 

俺だって本当は、台風の影響が通勤路線に出る前に帰りたい・・・

 

そう思っていたが、安藤さんの仕事と明日からの休みを考えるとどうしてもここまで仕事をやり切っておきたい。

必死のデータ入力や会議資料を作っていたが、予想よりも早く大雨・強風・落雷の渦中にはまってしまった。

 

 

 

「あっ!」

 

窓の外のひときわ強い光に思わず叫び声をあげてしまった。

と同時に、室内にいるのに耳をつんざく大きな音。

ガラガラガラガラ!、ドーーーーーン!!!

『きゃー』

同じフロア―の別の課から叫び声が聞こえた。

 

あ、落ちたかも・・・

 

突然の雷に思わず体がびくっと跳ね上がり、心臓がドキドキしていれる。

と、社内の電気が一斉に消え、フロアーが暗くなった。

 

「落ちたな」

 

薄明りの中、櫻井課長が俺のデスクまできて小さな声で話しかけてきた。

 

「の、ようですね」

 

すぐにいつもの明かりの半分程度の室内灯がついた。

 

「データは無事か?」

「はい、今のところは何とか・・・」

「今すぐデータのバックアップをとったらPC電源を落とせ。

他の奴らのも電源を落とす必要があるから、俺と手分けしよう。

全員分終わったら報告しろ。情報システム部と管理部に連絡して全部のPC電源をオフったこと連絡しないとな」

「は、はい、承知しました」

「今ついてるやつは非常電源だからな。

はやいとこオフってできるだけ電源をサーバーに使わせてやりたい」

「はい!」