「潤さん、潤さん」
「ああ、翔。おかえり・・・」
翔がホテルの部屋に帰ってきた時、俺はベッドで転寝をしていた。
・・・いや、翔の帰り時間が遅かったんじゃない。
今日一日だけでいろんなことがあって、いろんなところへ行って、精神的にも体力的にも疲れてしまったのだ。
「あのさ、これって・・・」
翔が言いよどむのも無理はない。
ベッドの上だけではなく、床にも幾枚もの物件情報。そして市内の地図。
「引っ越してきてくれるの?!」
「あー、うん。
実はさ、こっちで仕事が決まって・・・」
「ほんと?!」
「うん・・・それで、早急に部屋を見つけないといけなくて。
地図を見ても、俺、土地勘ないし。
不動産屋のおすすめをピックアップしてもらったけど、どこがいいのかわかんなくて」
何となく最寄りの駅別に分けた物件情報の山。
もちろん職場に通うのに便利がいいところがいい。
・・・今度は高層マンションの上の方だの、そんな場所じゃなくていいんだ。
もっと、落ち着いて。
普通の生活がしてみたい。
「・・・。あのさ。
コレとか、コレとか。みんな間取りが2LKか3LDKばっかりなんだけど」
「ああ///うん・・・」
翔の言うとおりだ。
マリコさんに連れていかれた不動産屋で、俺の口をはさむ間もなく紹介されたのは準ファミリー向けの物件だ。
『大家が話が分かりそうなところにしてちょうだい。
そこそこ街中で少し歩けば駅に出られるところがいいわ。
それから、キッチンはコンロがちゃんとあって対面キッチン?だとなおいいわ』
『マ、マリコさん。まだ相手と一緒に住むか決めてなくて』
『あら。
こんなに魅力的なアナタを振るヤツなんているの?
だったら即、東京に連れて帰るわ』