何時間かぼーっとベンチに座っていると、気まぐれな梅雨空は雲の厚みを増し、やがて大きな雨粒を落としてきた。
芝生や小道を歩いていた人たちも濡れないよう、濡れたとしても最小限にしようと小走りで過ぎていく。
だけど自分だけは動けずにただ雨に打たれていた。
「カゼっ!ひくから!」
突然、自分に向けられた声にはっとした。
「傘、持ってないの?」
「……」
「オレも、持ってないや。走れる?」
手を掴まれて近くの大きな木の下に入った。
「たかが雨って気を抜いちゃダメだよ。低体温症になることだってあるんだから」
雨で濡れた髪を両サイドへ撫でつけるように掃ってくれた、その人は・・・
「ショウ」
にっと笑って、優しく名前を呼んでくれた。
「ジュン、さん」