「ったく、岡山の病院って言ったって、勤務先の名前も聞いていないのにどーすんだよ、これ」

 

会えるわけない、とわかっているのに、この地のどこかにショウがいるんだと思うと、心の奥底の方がそわそわとする。

空が広く見えるせいか、どこかほっとできる街だ。

駅前の地図を確認すると、大きな病院がいくつかあるようだ。

会えるわけない、とわかっているのに、その中の一つに向けて足が向く。

 

 

 

新しそうな建物は、どこからどう見ても「病院」そのもの。

 

「まあ、奇抜や斬新からはかけ離れたところだよな」

 

割と広い芝生と、その芝生をぐるりと囲むように歩道があり、その歩道沿いにはベンチまであった。

その一つに腰を掛ける。

昼下がりの空間には、今診察を終えて駅に向かう人や、入院患者なのかラフな格好の人が付き添いの人と一緒に歩いていたり、自分と同じようにベンチに腰かけて、本を読んでいる人もいる。

 

 

一応持ってきた旅行の鞄は駅のコインロッカーに置いてきたので、現在の自分の持ち物は必要最低限の貴重品と、売店で買った水の入ったペットボトルのみ。