ドラマでショコラティエの役の時は、それぞれに作ってきてくれた。

本当にお店で売っているものと見紛うものが、箱の中に鎮座している。

 

「すっげ!すっげ!ホンモノみたいっ!」

「チョコが本物じゃなかったらなんなんだよって」

「うん。マツジュン、これ、うめ~ぞ」

 

みんなに褒められて、すごくうれしそうな顔の潤。

 

 

「・・・すごいな。プロの作ったものみたいだ・・・」

「ほんと?うれしいな。うまくいかないところはちょっと手直ししてもらったけど、テンパリングも味を決めるのも、ほとんど俺がやったんだ」

「そっか・・・」

 

メンバーカラーをイメージしたチョコがそれぞれに入っていて、俺は惚れるくらい艶を持った赤色の一粒を摘まんだ。

 

「それね、中にリキュールが仕込んであるの」

 

チョコをかじってみると、中から強めの液体が舌の上に落ちてきた。

 

「!濃っ!」

「んふふ、しょおくんならそれだけ濃くても平気だと思って」

「ふは。いくら何でも濃すぎるって。酔いそう」

「んははは。・・・ねぇ、酔ってくれる?」

「・・・いいよ」

 

 

 

 

翌年はまた市販品に戻ったら、智くんがぶつぶつ言っていたっけ。

「リーダー、もらえるだけありがたいと思わないと」

「そーだよ。おれたち松潤に高級チョコをもらうばっかで、自分たちで用意したことないんだし」

 

 

 

 

今年は。

深夜に終わった生放送後、「ちょっと寄りたいとこあるから」とマネージャーに言った。

「明日の迎えは、こちらでよかったですか」

「うん。頼んだ」

わかりました、そう答えて移動車は走り去った。

 

 

 

「え!しょおくん、来てくれたの!」

リビングで読んでいた台本を置いて、びっくりした顔で迎えてくれる。

「・・・今年、用意してないよ・・・・・・」

しょぼんと落ち込んだ姿に、ああ今日がちゃんと何の日だかはわかっているんだなと思った。

「大丈夫。俺が用意したから」

シャンパンとチョコが入った袋を掲げた。

 

 

 

ちゃんと冷やしてきたシャンパンの栓を抜いてサーブしていると、買ってきたチョコを皿に綺麗に盛り付けてキッチンから持ってきてくれる。

 

「もう遅い時間だから、少しだけ。ね」

 

 

 

小さなサイドテーブルを出してきて、ソファー二人寄り添うように腰かければ、それだけでふたりだけの幸せが降る夜。

潤が、足の長いグラスと置いて、弁柄色の一粒を口に入れる。

 

「ん、おいし」

「どれ」

 

潤の方頬に手を添えて覗き込むように目線を合わせる。

 

「もう・・・」

「あじみ・・・」

 

唇を寄せたら素直に瞳が閉じられた。

 

 

 

 

チョコレートの思い出は、いつもずっと君の隣・・・