「しょおくんも食べない?」

 

まだジュニアだったころの、一コマ。

いかにも手作りなクッキーを差し出していた笑顔の可愛い、ちっちゃなアイツ。

 

「サンキュ」

 

ちょうど小腹がすいていたので、速攻もぐもぐと食べた。

俺以外にもアイツにもらったのか、周りで何人かが同じようにもぐもぐしている。

 

「・・・ど、う?」

「うん、おいしい」

 

そっかぁ、と満面の笑みを浮かべたアイツに特に何も感じず、次のクッキーへと手を伸ばす。

 

「うん、うまい」

「あ、のね。

母さんと姉ちゃんが作ったの。んで、僕もちょっと手伝ったんだ」

「ふ~ん」

 

 

 

型抜きで作られた、少し硬めのクッキー。プレーンとココア。

ちょっと形が崩れたのか、厚みが違ったのか、こっちの星型はすこしゆがんでいるし、こっちのハート型は少し焼きすぎているみたいだ。

 

「でもすげー。こんなの作れるなんて」

「んふふ」

 

なんでまた手作り?なんて思ったら、あ、バレンタインって思い当たった。

 

 

 

アイツの「すき」「だいすき」の告白は受けてはいるけれど、そういった気持ちが入っているわけでもなし・・・

 

 

 

 

 

デビューしてからも、2月に入るとソレはどこからかやってきて

「はい、リーダー」

「はい、相葉くん」

「はい、ニノ」

のついでのように「はい、しょおくん」

 

 

手の中におさめられた有名どころの箱におおっ!感嘆の声を上げ、ピカピカと光を反射するチョコを口の中に入れて堪能する。

 

「松潤、これうめ~」

「あ~~。うまっ」

「潤くん、おいしい」

 

三者三様の姿を見て。

 

 

だけど、そんな風に気軽に食べる気になれなくて・・・

「・・・しょおくん。チョコ、嫌いだった・・・?」

 

笑っているのに、明らかにしょんぼりした様子の潤に、ううんと首を振ってから一粒チョコを摘まむとそっと口の中にいれた。

 

「うっめ~」

 

低めの声で伝えると、潤ははにかみながら嬉しそうに笑う。

 

「よかった」

 

その目が潤んでいることを、ちゃんと俺は気づいていたよ。