しばらく抱き合ったままの二人だったが、少しだけ冷えた風に触れてようやく離れた。
「・・・少し冷えてきちゃったね。
かえろうか?」
「・・・うん」
二人は手をつないだまま、翔がゆっくりと先に階段を降り、そのあと潤がついてゆく。
「今夜は隆ちゃんとこのお店でなんかテイクアウトしてこうか?」
「・・・じゅんのことは、たべないの?」
「・・・食べるよ。でも、一晩一緒に過ごしたいから。」
翔の言葉に嬉しいような、なんだかくすぐったいような気持になり、潤はうつむいてしまう。
階段をすべて降りると、二人は寮を反対側の、商店街の方へと歩き出した。
「・・・ちゃんと二人ともいい感じだな」
すっと縁側に続く障子があいて、日に焼けた一人の青年が庭を見ながらつぶやいた。
この神社の神主である。
「・・・よかったよかった」
後ろ手に障子を閉めると縁側に備えつけられた雨戸を閉め始めた。
今夜は昨日よりも少し気温が下がるようだ。
また明日も、今日のような暑さだろうか?
そんなことを考えながら神主はすべての雨戸を閉め終えると、廊下を歩いて隣の建物に入っていった。
部屋の明かりが灯された。