りんちゃんを、葬式に出席させるかさせないかで、母親と叔父さんが揉めて。
結果、並び順が、俺のオレにりんちゃんが座ることになり。


りんちゃんは、オレの隣にいながらも、ずっと泣くことはなかった。





火葬場から帰ったら、弁護士さんと行政書士さんがいらして、遺言書の公開となった。



「遺産のうち、家と1000万円は野上 凛のものとする」
「はあ?」
「ええ?」
「なお、野上 凛を養育するものには、残りの財産の全てをその者のものとする」
「ば、バカな!」
「とうさん・・・」
「野上 凛を養育するものが居ない場合、家と1000万円を除いたものを、三人で分けることとする」


じいちゃんの遺言書は、7年前に叔父さん立ち会いのもと作ったものから、りんちゃんが生まれた後に作り変えてあった。
叔父さんが、弁護士さん達に詰め寄って居たが、りんちゃんが法律上、実の子だと認められていて、意識のはっきりしている時に作り変えられたものであるので、遺言書どうりになるそうだ。


「おんな、女にじいさんは騙されたんだ!」


叔父さんは怒鳴り散らすわ、なだめるオレの母親に罵声を浴びせるわ、そんな母親も
「兄さんがちゃんと世話をしてないからでしょ!」
と、ドラマみたいな場面が繰り広げられた。



「あの子はお前が引き取れ!」
「なんでよ!兄さんが筋でしょ?!」
「何言ってるんだ!こんな田舎で、世間体が気になるだろう!」
「世間体って!じゃあどうして父さんを引き取らなかったのよ!」


そんな間も、りんちゃんはただじっとしていた。
小さいながらも、自分のことを言われていることもわかっているようだ。


拒否され、誰からも必要とされないツラさは、オレが一番よくわかる。
それを、こんな小さな子どもの前で、なんていたたまれない。

「・・・オレ、りんちゃん、引き取るよ?」
「なにをバカなこと言ってるの?潤!あなたねぇ」
「おお、それがいい、それがいい!」
「ちょっと、兄さん!」



「りんちゃん」
りんちゃんの視線に入るようにそっとしゃがみこんだ。
「りんちゃんのお母さんの手紙によると、君のお母さんは、もうここに戻らないんだって」
「・・・」
すでに言い聞かせられていたのか、りんちゃんは感情もなく頷いた。
「それで、あのおじさんのところに行くか、あっちのおばさんのところに行くか、施設っていってお父さんやお母さんのいない子達が住んでるところへ行くか、なんだけど。」
「・・・」
「・・・それとも、ボクのところ、来る?」
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