「うふふ、そうね」
母親が穏やかに笑った。
「あ、潤来たんだ」
ねえちゃんも台所にやってきて、テーブルの上に置いてある小さなお菓子を摘んだ。
「お父さん、また叔父さんたちに捕まってたよ。
お通夜大丈夫かな?」
酒好きの叔父さんのペースで飲んでたら、父親は酩酊してしまうだろう。
止めた方がいいのだろうが、だいぶめんどくさい叔父さんに、母親もねえちゃんも辟易しているのだろう。
そういう自分も、ばあちゃんの葬式の時にイヤというほど経験したので、オレも止めにはいかない。
いわば、父親は生贄だ。
ふと台所の窓から外を見ると、黒い服を着た小さな女の子が立っていた。
「妙子ねえちゃんの子ども?」
「ちがうわ」
「だれか親戚の子?」
「ううん」
母親が素っ気なく返事をしていたが、またテーブルの上で頭を抱えてしまった。
「じいちゃんの隠し子なんだってさ」
ぽつり、とねえちゃんが言った。