最後の教習から10日以上経っての受験となった。
操縦には自信あるし、コースも覚えた…けど、いざコースに出たら頭真っ白になりそうで怖い。
あとは確認動作のし忘れでつまらない減点をしないこと。
とにかく頭の中で何度もコースを反芻しながら、久しぶりの教習所へ。
受付を済ませて試験控室へ入ると、四輪受験者に混じってヘルメットを抱えたオジサマ(50歳くらい)が。
今回受検するのは僕とこのオジサマの二名のようだ。
ほどなくして試験官がやってきて、二輪の僕達は別室へ。
試験の概要と注意事項、そしてアドバイスを受ける。
だけど、あまりたくさん説明されると、かえって混乱して失敗するのは教習で実証済みなのでので、申し訳ないけど後半は聞き流してた。
しかし聞き逃せないことが一つ。
「コースを間違えても減点にはなりません。正しい手順で元のコースに復帰してもらえばOKです」
なんだよそれを早く言ってくれ。
コースへ移動。
僕が一番手。
プロテクターを着けてヘルメットを被る。
Dリングにストラップを通し、気合を込めて締める。
視線の先にはNC750L・139号車。
歩み寄り、その白くてファットなタンクの脇に立つ。
無線機から流れた「では始めて下さい」の声で完全に腹をくくった。
周囲の安全確認をして跨り、ミラーを調整…真っ先に注意受けたのがミラー調整し忘れだったなあ。
日常では絶対行わないような、煩雑な「手順」…というかほとんど「作法」
それらをきちんとこなしていざ発進!
試験コースは「Bコース」
急制動へ行かずに、まず波状路へ向かうコース…大丈夫、体が覚えてる(気がする)!
波状路…ちょっと勢いつき過ぎてリズムが良くなかった…落ち着こう!
波状路の後はABコース共通の「エスイチフミクラ」!
S字…なんてことない、むしろ出口周辺、他のクルマが来てないかに意識を!
一本橋…落ちなきゃいい!ここで欲出しても意味が無い、普通でいい!…よし、クリア!
踏切…日常の悪癖を出すな、停止線の手前で止まる!
クランク…前回エンストしたな、回転は気持ち高めで!
クランクを出たらBコースだから急制動だ!…ああっ!バカ!そこは左折だから左車線!
…焦るな、コース間違えは減点じゃない、落ち着け…落ち着け!
急制動…止めることは問題ないはず、停めた後に前ブレーキから手が離れる悪癖を封印!
スラローム…20年前、運転免許試験場で「一発試験」受けた時は、パイロンに引っ掛けて試験終了だった…上手くいかなくとも確実に越えよう!タイムなんかどうでもええわ!
坂道発進…ここも停止線だけ注意すればいい!小回りで左折して、右に合図出して車線変更…そして停止!
最後のターンを終えて発着点に停車。
二ヶ月間世話になったNC750Lを停め、充分に後方確認をしてバイクを降りた。
万感の思いとか、そういうのは無かった。
「まあこれなら大丈夫だろう」とだけ思った。
すぐに二番手・オジサマの試験が始まった。
プロテクターを脱ぎながら様子を見守る。
オジサマ、いきなりコース間違えたよ…。
後方確認、だいぶし忘れてる…。
一本橋ギリギリ越えたけど、あと1m長かったら脱輪じゃね!?足ついちゃってるし…。
「この内容じゃあちとキツいだろうなあ…」
自分のことは棚に上げて、オジサマの心配をしつつ校舎へ戻る。
30分程待機した後、無事合格の通達。
合格の喜びよりも、オジサマがあの内容で合格という驚きが上回った。
正直…補習受けさせろと思った。
なにはともあれ、これで二ヶ月間の教習所通いも終わった。
当初の目標であるストレート合格は達成した。
今となってはそんなことどうでもいい。
開放されただけでも満足だ。
これまで培ってきた自信をぺしゃんこにされた二ヶ月間。
思うように時間が取れなかったり、仕事疲れに加えて炎天下の教習で、体力的にきつかったりと、苦しかった二ヶ月間。
そして、得るものも多い、そんな二ヶ月間だった。
ちなみにこの二ヶ月間、教習所では教官としか会話せず。。
しかも口にした言葉はほぼ全て、
「はい」
「よろしくお願いします」
「ありがとうございました」
の3ワードのみ。
教習所で友達ができるというのは都市伝説だろう。