クリス・コスナー・サイズモア
(1927~2016)
この映画は、イブという名で世界的に有名になった、本名クリス・コスナー・サイズモアという多重人格の女性の物語です。
原作は、「私という他人」。
これは、クリスのことを治療した医師が著わした本ですが、その後20年以上を経て、クリス本人が実名で「私はイヴ」という自伝本を出しています。
自伝本「私はイヴ」には、更なる驚きと感動がありましたね。
実際は3重人格ではなく、22重人格だったんだと!
ほんまでっか?
映画でイブの3重人格を演じたのは、映画完成後にポール・ニューマンと結婚したジョアン・ウッドワードでした。
内気なイブ・ホワイトに比べて、奔放なイブ・ブラックの弾けぶりを、とても魅力的に表現していました。
YouTubeで公開されている、クリスの記録映像を見ると、ウッドワードが、特にイブ・ブラックのちょっとした表情の癖などを、役作りの参考にしていたのは間違いないかと思われます。
彼女はこの演技で、米アカデミー主演女優賞に輝いています。
https://youtu.be/9X3r49yamlE
しかし、これが詐病では無いとしたら、可哀想過ぎますな…
イブの三つの顔
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210610/02/takaida1960/25/fd/j/o0720108014955066170.jpg?caw=800)
1957年 アメリカ映画
制作・脚本・監督
ナナリー・ジョンソン
主演
ジョアン・ウッドワード
(3人のイブ)
1951年、イブ・ホワイト(ジョアン・ウッドワード)と旦那のラルフ・ホワイト(デイビッド・ウェイン)が、精神科のクリニックを訪れます。
イブ・ホワイトは、偏頭痛に悩まされていました。
最初、町医者へ行ったのですが、その医者からこの精神科クリニックを紹介されて、夫と共に来院したのでした。
ホワイト夫人は、全く生彩が無く、控え目な話し方です。
彼女は、クリニックの医師ルーサー(リー・J・コップ)に、時々記憶が無くなることを告白します。
X線検査、ラボラトリ検査では、頭痛の原因は見つかりませんでした。
彼女はそれから1年も経たない1952年の春、血相を変えた夫に連れられてクリニックにやって来ます。
夫の話では、ホワイト夫人が幼い娘のボニーの首を絞めて殺そうとしたというのです。
しかし、ホワイト夫人は、そんなことはしていないと言い張ります。
とりあえず、夫を診察室の外で控えさせて、2人きりで問診を始めた時、それは起こりました。
突然の頭痛に顔を歪めるホワイト夫人…
そして…眼力が半端ない女に変身します。
イブ・ブラックの登場でした。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210610/02/takaida1960/ff/b4/j/o0736055214955066172.jpg?caw=800)
イブ・ブラックは医師に対して、自分は独身だと言い張ります。
「あんなアホと結婚すると思う?」
「ボニーは私の子じゃないわ」
「私はイブ・ブラックよ!」
その後ホワイト夫人は、大学病院の精神科に入院と言う事になります。
医師ルーサーは、人格統合の手始めとして、ホワイト夫人に彼女の中にいるイブ・ブラックの存在を明かして、多重人格という病気を認識させます。
そして夫にも病気を理解してもらう為に、イブ・ブラックと対面させるのですが…
イブ・ブラックは夫に向かって言い放ちます。
「こんなウスノロきらい!顔も見たくないわ!」
当然、夫は激怒しますな。
「殴ってやる!」
受けて立つイブ・ブラック。
「やってみな!」
夫は、これまでにも、時折イブが人が変わったようになる事に気付いていましたが、イブ・ブラックの存在は知らなかったのです。
イブ・ブラックが、自分の存在を知られないようにしていた為です。
夫は医師に説明されて、彼女が多重人格である事を、一応は理解します。
しかし大学病院を退院後、益々大胆に出現するようになったイブ・ブラックに、夫の堪忍袋の緒はプッツン…
結局、2人は離婚してしまいます。
それは、イブ・ブラックの望むところではありました。
そして、セラピーを続けるうちに新たな人格、ジェーンが誕生してしまいます。
逆に悪化しとりますやん!
医師も困惑します。
しかし後でわかるのですが、ジェーンの誕生は快方へ向かう兆候だったのです。
ジェーンは、他の2つの人格の統合の受け皿として誕生したのでした。
病気を自覚したイブの、この病気を治したいという強い思いが、本人も医師も思いもよらぬ形で、快方に向かって進行していたんです。
人間の精神って、ホント不思議ね!
でも当面は、イブとイブ・ブラック、そしてそれまでの人生の記憶をほとんど持たないジェーンの3つの人格が入れ替わり立ち替わり現れて、混乱した生活を送らなければなりませんでした。
そして、最初の面会から2年後…
それは、セラピー中にジェーンが出ている時に起こりました。
イブが幼い時にトラウマとなった恐怖の記憶…それがイブ・ブラックが誕生した原因でした…に辿りついた時、そこから全ての記憶のネットワークが繋がります。
「覚えているわ…1年生の時の先生がベイツ先生…、2年生の時の先生がグリフィス先生…、3年生の時の先生が…」
「覚えているわ!全て思い出せる!」
みるみるジェーンの瞳が涙でいっぱいになっていきます。
同時に、私の目も涙でいっぱいになりました。(T^T)
そしてその時には、イブもイブ・ブラックも消えていました。
多重人格なんて詐病違いますか?という疑いも、わての中にはありますのんや。
詐病かどうかを見分けるポイントとして、各々の人格の筆跡が違うということがあるのですが…。
精神科医達によって、正真正銘の多重人格と診断された、24人のビリー・ミリガンとか、16人のシビル、そしてこの22人のクリスなどは、実際、これだけの人数の筆跡を、意識して使い分け続けるのは容易ではないと思われます。
そして、20人格ぐらいで驚いてはいられません!
世の中、上には上がいるもんで、多重人格者を扱ったドキュメント本の中で、最も驚愕し、かつ、おぞましかった本はこれです。
400重人格って!
ほんまでっか?
400人というその数には驚愕ですが、この本はサタニック・カルトとジェニーとの関わりがおぞましいです。
ジェニーの母親が、サタニック・カルトの信者だったんですね。
サタン崇拝者は、度重なる不幸に遭遇して人生の不遇を嘆き、結局神はこの世界では無力で、本当に地上を支配しているのは悪魔である! という歪んだ悟りに至ってしまい、神が自らに似せて創造した人間の体を破壊する事で、悪魔への忠誠心を示すわけです。
ジェニーの中で人格がいくつも生まれていく要因には、母親が入信したカルト教団の残忍な儀式が深く関わっています。
わしは残酷な描写にはブチ弱いので、この本を中々読み進められず、完読するのに3ヶ月近くかかってしまったんじゃ。
でも、サタニック・カルトの業界用語の勉強にはなりましたね。
(^^;
なお、この本で「本書に寄せて」という文を、クリスが書いています。
それにしても、多重人格の話は、自分自身のアイデンティティーにも不安を感じさせてくれますな。
かの変人…いや怪人、南方熊楠によると、人の心は1つでは無いといいます。
彼自身、頭の中で心が別の心に伝達するさまを体験したと言っていますが…
「このいくつかの心は常に変化しつつ複合している…」(南方熊楠)
マジっスか?
あたいの中にも、いくつかの心があって、記憶をシェアしているから、1つと思っているだけかしらん?
そう言われてみると、このブログを書いている間にも、いくつかのパーソナリティーが入れ替わり立ち替わり出て来ている様な気がしてきましたよ…
(^^;
ただし、南方熊楠は、1人の人間に宿る霊魂が1つでは無い、と言っているようである。
精神医学の解釈によると、ごく幼い時に直面した死への恐怖から逃避する場所として、最初の別人格が生み出されると考えられています。
なので主人格には、その恐怖の記憶が有りません。
多くの多重人格の発症原因が、幼い時に受けた虐待にあるということは、幼児期の虐待が幼児にとって、死に直結する恐怖であるという事なのだと思います。
しかし、多重人格者霊媒体質説も捨て切れない私です…
別人格の中に、当人の知らない外国語を話す人格がいる例があるんですよね…
(^^;
本日もご訪問ありがとうございました。
お体ご自愛ください。
吹替版声の出演
イブ(平井道子)
夫ラルフ(村越伊智郎)
医師ルーサー(富田耕生)