記事入力 : 2014/10/02 08:29
【萬物相】朝日新聞と日本の極右


 1987年1月、朝日新聞東京本社2階の窓に2発の銃弾が撃ち込まれた。翌日「日本民族独立義勇軍 別動 赤報隊」と名乗る団体が犯行声明を出した。「朝日新聞が反日世論を育成してきた」とし、記者たちを皆殺しにするという内容だった。それから4カ月後、悲劇は起こった。締め切りの時間が迫った阪神支局(兵庫県西宮市)に男が押し入り、記者1人を殺害、もう1人に重傷を負わせ逃走した。さらにその4カ月後、名古屋市にある記者の独身寮に銃弾が撃ち込まれ「反日朝日は50年前に返れ」という犯行声明が出された。
 日中戦争や太平洋戦争の当時、朝日新聞はほかの新聞と同じように、軍国主義を宣伝する御用新聞に成り下がった。戦時の最高統帥機関である大本営が指示した通りに記事を書いた。敗戦の数日前まで「皇国軍隊は進撃を繰り返している」と報じた。論説委員や記者たちは記者を書くだけでなく、軍国主義の中心的な勢力と一心同体になっていた。
 敗戦から8日後の1945年8月23日、朝日新聞は「自らを断罪する理由」と題する社説を掲載した。戦争をあおった責任を認め反省する内容だった。その後、朝日新聞は平和や人権、環境、国際協調を重視する道を歩んだ。今は政治指導者の靖国神社参拝を最も強く批判している。入学式や卒業式の際、児童・生徒・学生に起立して国歌『君が代』を斉唱するよう求めることにも反対している。旧日本軍の慰安婦の実態についても最も積極的に報道してきた。朝日新聞は日本の主要日刊紙のうち、ホワイトカラーや高所得層の購読率が最も高く、知識人の購読者も多い。
 今年8月初め、朝日新聞は1980-90年代の慰安婦に関する記事16件を取り消した。済州島で慰安婦を強制動員したという実名での証言を基に書いた記事だったが「根拠がない」と断じたのだ。朝日新聞を攻撃する機会をうかがっていた右翼は「間違った記事のせいで日本の威信が傷ついた」と一斉に避難した。極右の産経新聞の元記者は朝日新聞の不買運動に乗り出し、またある企業関係者は同紙に広告を掲載しないと表明した。挙句の果てには、当時記事を書いた記者が教授を務めている大学に「(元記者を)辞めさせなければ爆弾を爆発させる」という脅迫状が届いた。インターネット上には「朝日記者殺害リスト」も出回っている。
 筆者が東京特派員を務めていたとき、日章旗をあしらった黒塗りの車が街宣するたびにひやひやした。これらは暴力団の傘下にある右翼団体だという。日本にはこのほかにも、宗教右派や学生右翼、ネット右翼などさまざまな右翼がいる。嫌韓・嫌中デモの中心となっているこれらの右翼は、軍国主義の狂気に包まれていた1930-40年代を懐かしんでいる。理性を失った軍国主義者たちがのさばっているのが、今の日本の苦々しい側面だ。

辛貞録(シン・ジョンロク)論説委員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版


記事入力 : 2014/10/02 08:41
【記者手帳】「慰安婦戦犯たたき」に沈黙する日本メディア
「慰安婦報道」元記者解雇要求に大学学長「毅然と対処」宣言

 北星学園大学(北海道札幌市)の田村信一学長が9月30日付で「本学学生および保護者の皆さまへ」という文を発表、「大学の自治を侵害する卑劣な行為には毅然(きぜん)として対処する」と表明した。これは、同大学の植村隆・非常勤講師の解雇を要求する極右勢力の脅迫に屈しないことを宣言したものだ。
 植村氏は、朝日新聞記者だった1991年、旧日本軍に強制動員された元慰安婦として初めて公に証言した金学順(キム・ハクスン)さんの記事を報道した。極右勢力は同氏を慰安婦問題を捏造(ねつぞう)した主犯だとして、同校周辺で解雇を要求するビラを配ったり、「大学を爆破する」と脅したりしているという。田村学長は「学問の自由・思想信条の自由は教育機関において最も守られるべきものであり、侵害されることがあってはならない」「学生の皆さんおよび植村氏との契約を誠実に履行すべく、万全の警備態勢等を取りながら後期の授業を継続している」と書いている。
 「知性の殿堂」である大学が取るべき当然の見解表明ではあるが、最近の日本では異例のことだ。神戸のある大学は極右勢力の脅迫に屈し、今年3月に植村氏の教授採用計画を撤回した。大阪のある大学も慰安婦関連記事を書いた朝日新聞元記者の教授について、解雇を要求する脅迫に事実上屈し、辞表を受理した。
 一部大学が脅迫に屈したことから、極右勢力は我が世の春とでもいうように大手を振って歩いている。本人はもちろん、家族の写真や学校までインターネット上に広まっており、気に入らない記事を書いた朝日新聞記者の殺害リストまで作られている。
 民主主義の根幹を揺るがす反文明的な犯罪行為であるが、日本の一部メディアや政治家はむしろこれを助長している。一部週刊誌は朝日新聞元記者たちを「慰安婦問題の戦犯」と攻撃して現在の職場を公表、脅迫を事実上あおっている。一部政治家や知識人たちまでもがこれに加勢し「朝日の慰安婦記事で日本の名誉が損なわれた」と主張している。
 韓国大統領に対する醜聞的報道で韓国検察に取り調べられている産経新聞記者に対し「言論弾圧」と口をそろえる日本のメディアや政治家・知識人が、奇妙なことに自分の国で行われている「ジャーナリストに対するテロ脅迫」には沈黙している。田村学長の宣言が、最近揺らいでいる日本の知性や良心を立て直すターニングポイントになることを期待している。

東京=車学峰(チャ・ハクポン)特派員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版