記事入力 : 2014/06/01 09:33
【コラム】巧遅より拙速を好む国


 1977年、米国のある資産運用会社で日本企業担当のアナリストとして勤務していたブラッド氏は、当時勢いのあった複数の日本企業の関係者に「今後10年間、最も心配なことは何ですか」と尋ねた。この質問に対する日本企業の回答はどこも同じで、それは「韓国がすごい勢いで追ってくることが最も恐ろしい」というものだった。
 ブラッド氏は韓国という国がどこにあるのかさえ知らなかった。地図を開くと韓国は日本のすぐ隣だった。すぐに韓国を訪問した。日本という経済大国が最も恐れるという韓国とは、いったいどのような国なのだろうか。ブラッド氏はサムスン電子など幾つかの企業を訪問したところ「こんなに素晴らしい企業があったのか」と感嘆した。
 その後、ブラッド氏は世界で初めて韓国に投資するファンドを立ち上げた。巨額の富を築いた彼は常に韓国を愛した。韓国人たちは足を踏んでも「すみません」の一言もなかったが、これについても「何でも早くやろうとする韓国人の勤勉さの表れ」と語っていた。
 韓国の「パルリパルリ(早く早く)文化」はこのように間違いなく大きな強みだ。しかしこれは同時に「何でも適当に」という意味でもあり、この「適当」というのはさまざまな不条理や大惨事の根本原因にもなっている。さらにグローバル時代となった今、韓国の「パルリパルリ文化」はそのネガティブな側面がさらに露呈し始めている。
 2009年に世界的名門のインド工科大学(IIT)で韓国人として初めて経営学博士号を取得したキム・ヒョンドゥク氏は、その博士論文の中でインドと韓国の文化の違いについて次のように説明している。
 「韓国人とインド人はさまざまな面であまりにも大きく異なる。例えば仕事を始める前、韓国人は極端な楽観主義者であり、インド人は徹底した悲観主義者だ。韓国人は問題の70%を把握した上で『パルリパルリ』仕事を始めるが、インド人は120%確認してからその仕事をやるかどうか決める。ところが実際に仕事が始まると、韓国人とインド人の態度は正反対となり、韓国人は徹底した悲観論者、インド人は安易な楽観論者に変わる。インド人はあらかじめ把握してあった問題が発生すると落ち着いて対応し、損失が発生しても受け入れるべきは受け入れる。これに対して韓国人は『パルリパルリ』に執着するため、あらゆる問題が想定外であり、そのため大騒ぎをする。だからインド人は韓国人のことを『短い導火線』『押すだけでパニックになる人間たち』と表現する」
 これは比喩としてはかなり大げさかもしれないが、巧遅よりも拙速を好む韓国文化に対する鋭い指摘であることは間違いない。韓国は今こそこの文化を克服しなければならない。このような観点から、今回の旅客船「セウォル号」沈没事故とその対応についてあらためて振り返ると、非常に残念な気がしてならない。原則から言えば、今回のような対策を出すのであれば、その前に事故に対する白書のようなものをまずは出すべきだった。何が問題だったのか、何が原因で問題が大きくなったのか、マニュアルの問題は何だったのか、現場にいた人間の行動にはどのような問題があったのかなど、細かく厳密に検討しなければならない。問題がきちんと正確に把握されることによって、初めてその対策も立てられ、再発も防止できるからだ。
 今回発表された対策は、事前に綿密かつしっかりと検討が行われたものではなさそうだ。選挙が近づいていることや、また国民の怒りが収まる気配がなかったことなどもあり、政治的に決断をするしかなかったのだろう。しかしあくまで原則は今回行われたようなこととは異なる。今回のように(原則を曲げて)小さなことに目をつむったことが事故を招いたのではないだろうか。にもかかわらずわれわれは早く対策を提示することを求めた。これはわれわれが一日も早く事故を忘れたかったためかもしれない。「パルリパルリ」と「適当」によって事故が発生したにもかかわらず、その解決策もまた「パルリパルリ」そして「適当」に出そうとしている。これは果たして正しい態度なのだろうか。

経済部=李仁烈(イ・インヨル)次長
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版