【社説】韓国に外交課題を投げかけた朝・日接近
2014年05月31日13時18分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]


北朝鮮の日本人拉致再調査と日本の対北朝鮮制裁解除を骨子とする朝・日本間の合意が、北東アジア情勢に微妙な波紋を起こしている。北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、4度目の核実験を示唆し、韓米のほか中国までが北朝鮮に圧力を加える状況で、日本が北朝鮮と手を握り合ったからだ。北核問題をめぐる韓日米協調の枠内で低い段階の南北関係改善を模索していた韓国としては、日本に意表を突かれる格好となった。中国に強力な対北朝鮮圧力を注文してきた米国も、少なからず体面を汚した。韓米が朝・日間の合意を人道主義的な問題だとして内心不快に思っているのはこれと関連している。3月の韓日米ハーグ首脳会談、4月のオバマ米大統領の韓日訪問で確認された3カ国間の協調は今後、試されることになった。
朝・日の接近は現段階でお互いの利害が一致したためとみられる。北朝鮮は核実験と長距離弾道ミサイル発射による国連制裁で、外交的孤立と経済難に直面している。中国も国連制裁の履行に積極的だ。習近平国家主席は6月、最高指導者では初めて朝中首脳会談をせずに訪韓する。この状況で北朝鮮は拉致被害者をはじめとする全面的な日本人調査を前面に出し、孤立から抜け出そうと考えたとみられる。「拉致問題」解決を公約に掲げた安倍晋三首相としても拒む理由はない。
北朝鮮の対日接近には、韓日米協調を揺さぶろうという意図があると見なければならない。安倍内閣としては北朝鮮カードで、日本の歴史認識問題を声を合わせて批判してきた韓中を牽制しようという側面がなくはない。韓中接近に対する警戒感は朝・日の共通分母でもある。日本は日本人拉致という人道的問題の解決のための朝・日合意を、韓米が正面から問題視するのは難しいという点も考慮したかもしれない。
朝・日合意事項は約3週後からの「行動対行動」で履行される。両国は合意文で国交正常化の実現を掲げたが、前途は険しい。北朝鮮の非核化に進展がない状況での朝・日関係正常化は現実性が落ちる。朝・日関係改善の速度と範囲がどういうものであれ、日本は透明に外交をする必要がある。そうしてこそ、対北朝鮮接近に対する韓米の疑惑を払拭できる。同時に韓日米間で合意した協調の枠が崩れないようにしなければならない。対北朝鮮関係の改善に動いただけに、南北関係の改善と北朝鮮の非核化進展を助ける方向に進むのが望ましい。
朝・日合意は韓国にも大きな課題を投げかけた。北朝鮮問題で当事者である韓国よりも日本が先を進んだ例はほとんどない。北核高度化の遮断という制約の中で、南北間の緊張を緩和し、関係を改善する努力が求められる。そのためには創意的かつ柔軟な対北朝鮮接近が不可欠だ。韓国政府は外交安保ラインが変わるのをきっかけに、対北朝鮮・対外政策を全面的に見直すことを望む。



【社説】朝・日交渉、注視はしても過剰反応は必要ない
 北朝鮮と日本は29日、北朝鮮が日本人拉致被害者の再調査を開始し、これに合わせて日本が制裁を一部解除することで合意したと発表した。北朝鮮が3週間後をめどに特別調査委員会を立ち上げれば、日本は直ちに日本が国連制裁とは別に行っている独自の制裁を解除するというのが双方による合意の骨子だ。この特別調査委は、1945年以来北朝鮮に残る日本人や日本人行方不明者などについても幅広く調査を行うことにしている。双方は26-28日にスウェーデンで行った協議でこれらの内容について合意し、またこの席では国交正常化に向けた意見交換も行われたという。
 北朝鮮は韓国などに送るスパイに日本語や日本文化を教え込むため、日本人を拉致してきた事実を2002年に初めて認めた。故・金正日(キム・ジョンイル)総書記は当時、平壌を訪れた日本の小泉首相に「13人の拉致被害者のうち8人は死亡した」と伝え、残り5人を日本に帰した。当時、北朝鮮は日本人拉致を認めることを決断し、その見返りに日本から巨額の援助を手にするための交渉を進めたいと考えていた。ところが北朝鮮が拉致の事実を正式に認めたことで日本国内の世論が反発し、しかもその後北朝鮮が送ってきた遺骨が他人のものであるとの調査結果まで公表されたため、交渉は完全に行き詰まった。その後、当時官房長官として小泉首相に同行した現在の安倍首相は昨年5月、側近を平壌に派遣して交渉の再開について打診し、1年後にこれを実現させたのだ。
 日本政府が自国民の拉致問題を解決しようとするのは当然のことだ。しかし北朝鮮との交渉に関しては、影響が拉致問題だけにとどまらないという大きなジレンマを抱えている。北朝鮮の実権を握っている金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が自分たちの犯罪行為に対する調査を受け入れたのは、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)による日本での活動を再び活発化させることに加え、国際社会による対北朝鮮制裁と韓米日3カ国による連携の足並みを乱れさせる意図があるからだ。これに対して日本の安倍政権も、北朝鮮との交渉を韓国・中国との交渉の足掛かりとして利用したいと考えているはずだ。
 しかし現時点で北朝鮮と日本が拉致問題を理由に、核問題への関心を弱めることは考えにくい今後日本が解除を進めるとされる制裁も、国連による制裁とは関係なく日本が独自に行っているものに限られている。しかも日本が核問題の解決に悪影響を及ぼし、米国の戦略と食い違うような行動を取ることなど考えられない。日本も北朝鮮による核開発とミサイル開発によって直接の影響を受ける立場にあるからだ。
 日本が解除を考えているのは▲北朝鮮との貿易の全面禁止▲北朝鮮の特定企業や民間人との取引禁止▲北朝鮮船舶の入港禁止▲北朝鮮に送金する際の上限額の緩和-だが、これらは国連決議とは関係のない独自の制裁であるため、解除するかどうかは日本が自由に決めることができる。また過去における双方の取引規模から考えると、日本がこれらの制裁を解除したからといって、北朝鮮が一気に息を吹き返すこともあり得ない。ただし日本が北朝鮮に対して誤ったメッセージを送り、核問題解決に想定外の障害を作ってしまえば、これは全面的に日本の責任だ。
 今韓国国内では日本が韓国側に交渉の経過を伝えなかったことへの不満が高まっている。北朝鮮問題に関する限り、どの国も韓国を抜きにすることはできず、また韓国抜きにするとその代償を支払わねばならないという原則を定めるべきだろう。実際にこれまで日本は韓国を完全に除外することはなかったし、また今後もそれは難しいだろう。そのことが明確な以上、韓国が必要以上に反応する必要はなく、またこれはプラスにもならない。韓国は引き続き毅然とした姿勢を示しながら、日本の意図と動向を見守っていくべきだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版