TakahiroCPAの備忘録

TakahiroCPAの備忘録

京都生まれ京都育ちの公認会計士TakahiroCPAが、会計・財務・税務を中心として日常的に感じたこと(感情の論理)、考えたこと(能率の論理)を備忘録的に綴ります。受験生を応援すると共に、専門家としての日々の修養を積み重ねます。*関係ない話のオンパレードです

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エピソード0
あなたはinstagramをやっていますか?


Seattleに数か月いて一番驚いたことの一つが、海外と日本の自己顕示欲の昇華選好の異同点だ。Twitterで一日tweetしている自称外資系consultantのように、一体何時仕事してるんだ?となるほどfacebookをいじる。アジア特に日本でtwitterがマーケットでfacebookを凌駕するのは日本人の歴史・風土に由来する性質が理由だろう。


Seattleに数か月いて一番驚いたことのもう一つは、自分の3つ程下以下の世代のinstagramの熱の入り具合だ。ある女性は、instagramはみんながやってるから、男がinstargamを通じ自分に好感を持ち恋愛に至るケースもあるため今の時代は非常に重要なんだよ、といっていた。異なる男性も似たようなことをいっていた。



「デジタルネイティブ」という言葉がある。これは端的に言うと「生まれた時からITが成熟しきっていた世代」のことを指し、年代的には「さとり世代」と概ね同世代を対象とする概念だ。さとり世代がさとりたくなったのは、日本経済が安定成長期終焉後である1991年以降の「失われた20年」にこの世に生を受け、将来に対する絶望に惴惴し、さとることが捷径だとさとったからだ。考えてみればそうだ。若者の車離れ、若者の◯◯離れ…というが、これらは全て経済成長期に比した『若者のお金離れ』である。その根底には『若者の日本社会・日本経済への不信感』と、資本の国際化・IT技術の高度な発展により「変化が高速化し過ぎた経済」の最終勝者になれない未来への諦念があるはず。ここがさとり世代(自分を含めて)を理解する際の前提条件なのだ。


では、さとり世代という言葉を輩出した日本社会のみがこうなのか。2003年に外資系証券会社ゴールドマンサックスは国家間ヒエラルキーの未来観測についてデータを出したが、それによると2050年には世界名目GDP(billion$)順位は中国(44 k)、アメリカ(35k)、インド(27k)、日本(6.6k)、ブラジル(6.0k)と続く。ゴールドマンサックスはBricsの予想も的確であったこと、及び同様の予測を世界最大のプロフェッショナル・ファームであるPwCも行っていることから、当該データも一定の信頼を見込めるだろう。上記のランキングに名前があがっている国家や同ゴールドマンサックス予測のNEXT 11の国家には、少なくとも概括的に日本と同じような現象は観察できないと評価可能なのではないだろうか。



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エピソード1
昨日はハロウィンであり、キリスト教徒が多数存在する米国では各所でハロウィンパーティの開催が観察された。しかし無宗教の日本において、日本の東京を始めとする都市部でハロウィン仮装イベントや道路の練り歩きは年々規模を拡大している。バレンタイン商戦の経済規模を超えたという記事も拝見した。


エピソード2
最近の海外由来の輸入物として、ランフェスというものがある。ランニングフェスティバルの略で、いくつかのコーナーを大人数で周り仲間と経験を共有する、若年層を中心に流行するイベントだ。日本では最近カラーラン、バブルラン、エレクトリックラン、サバイバルラン、ウォーターラン、チョコラン、モンスターナイトラン、ゾンビラン……など様々な種類のランフェスが人気を博している。アーティストのライブやアミューズメント施設と同様、高価な場所代を高い参加費と現地での高いfringe収入で補完する伝統的ビジネスモデルなのであるが、アイディアの目新しさと一体感の快感さで一定の成功を収めている。



エピソード3
最近の中国で、「結婚写真市場」が盛況であるのを御存じであろうか。中国の『インターネットプラス』によると、2014年の中国の結婚業界(婚約式、ウェディングドレス、前撮り、結婚式等)の市場規模は、すでに8000億人民元(約16兆円)を突破しており、これは日本の約8倍とも言われる。(一部東洋経済引用)。中国の女性は海外で素晴らしい景色をバックにウェディングドレスの写真を撮り、フォトショップ等を使用して最高の自分を演出するのに夢中だ。写真一枚に数十万円をかけるというのだが、その背景には①25、28、30歳の段階で女性の市場価値がかなり差がつくこと、②離婚の多い中国では「バツイチ」が経験豊富な女性として人気があること、といった理由がある。いわば離婚を想定して結婚しているのであるが、日本でいう「男は大晦日、女性はクリスマスケーキ」という言葉(男性のスイートゾーンは31歳まで、女性は25歳まで)よりシビアな年齢別市場価値の常識が中国では人口に膾炙しているのである。また、食糧危機を背景に共産党が1979年に創設した一人っ子政策は、違法にも関わらず医者に収賄し女なら中絶するケースの多発に繋がった。その結果
男女比が不均等になっており("黒戸"と呼ばれる無戸籍者人権蹂躙問題も跋扈)、玉の輿に関するレバレッジを利かしたシンデレラストーリーが発生しやすい可能性(つまり投資のボラリティが高い可能性)があることも影響していそうだ。

*一人っ子政策違反の罰金政府収入は年間200億元を超えるため廃止には複雑な障害がある。なお、社会保障費増大化等を背景に2016/1からは"二人っ子"政策となる。


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エピソード1とエピソード2の共通点は、写真をinstagramにあげられるという点だ。行動規範は非常にシンプルだ。Instagramにアップする写真を撮るために、現代の若者はハロウィンで盛り上がり、ランフェスを走り、カップル共同アプリで二人だけの思い出を社会に発信する。イベントが終わればinstagramを更新し、twitterのfollowerに楽しかったことを報告し、ブログの読者用にレストランの写真を載せ、facebookで世界の御友達に自分は引き籠りでないことを報告するのだ。時代は変わった。最近の若い者は近所付き合いがよくないという言説を耳にするが、ネットの発達で生活知識育児知識をなんでも近所に聞かなければならない時代が終焉したに過ぎない。


これらの行動傾向は、いい車いい時計を買って自慢していた古き良き日々とは毛色が異なる。明らかにそこには昔と現代で共通する自己顕示欲の昇華以外に理由が隠れている。それは、推測するに、①lineやmessagerでコミュニケーションも超高速化②ひいてはIT技術の高度な発展に伴い非公開情報が昔よりかなり僅少になったことが関係すると感じる。ネットがそれほど普及していない頃なら情報の非対称性を利用した情報弱者への搾取が主要ビジネスモデルであったが、現代では徐々にそうしたモデルの利鞘の面積が縮減している。Fintechの台頭で20世紀の覇者、外資系金融すらも数十年後の安否は分からない。現代では赤の他人でもfacebookで個人情報が判明するし、その人がどういう属性であるかがSNSでの高速コミュニケーションを通じて丸裸になりやすくなっているのだ。例えば、SNSの流行で、昔は広告宣伝費をかけないと売れなかったものが、イイモノは口コミで売れるようになった。SNSはマーケティングの無効化を部分的に遂行したのだ。

SNSから完全に隠遁すれば属性は判明しないが、今の時代ではSNSに疎かった場合の方が被るデメリットが大きい。トドノツマリ、エピソード3とも関係するが、現代では車や時計などの自分の付属物に投資するより、自分をセルフプロデュースすることを通じて「自分という資産」の価値をあげようとしているという潮流が観察できる。さらに、昨年流行した経済論文にトマ・ピケティの「21世紀の資本論」があるが、彼の主張を一言でいうと、「長期的に見れば利子率rは成長率gを上回るから、今から頑張る人でなくて元々資産家な人が勝ち」ということになる。「日本は沈没する船」としてお金がなくてもストレスを減らし幸福に生きていこうという術をさとり世代は無意識に模索しているのではないだろうか。日本に存在する仕事の殆どは高度に設計されていて、一定以上の社会的能力を具備した人間なら誰がやっても変わらない。就職や転職は労働供給市場と労働消費市場の接触に過ぎず、優秀か優秀でないかよりも、市場の景気が良いか悪いかが多くを決める。機会原価に目を背けストレスを削減しようという当該思考の変化は、動物としての人間の自然な環境適応なのだろう。 



しかし、そうしたセルフプロデュース能力は現代を生き抜くのに非常に重要だ。3年ほど前にある女性の知り合いがKnow-How(ノウハウ)の時代からKnow-Whoの時代になったといっていたが、同趣旨の識見を最近よく耳にする。つまりIT革命後の現代においては歩く辞書になるためひたすら知識を脳に詰め込むより、人脈の方が重要だという意味だ。お世話になった予備校講師(京大後期合格者で、30歳でついに念願の公認会計士試験に合格した真の努力者)がよく言われていた言葉に、「社会に出れば一人では何もできないから、何かをするにあたって他人の協力を仰ぐ必要がある。そのためにビジネスマナーやコミュニケーション能力、ひいては人間としての基本的な性質が重要なんだよ」という言葉があるが、これらの結果物としてセルフプロデュース能力があり、その上で得られるKnow-Whoが重要と言われるんだと考えを整理できた。3年前にKnow-Whoを教えてくれた女性は、現在は超大手企業の総合職として日本そして世界を飛び回っている。



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明日は朝に大きなプレゼンがあり超高速で書き上げたので粗が多い文章になりましたが、留学中気づいたことは時間を見つけて更新しようと思います。