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TakahiroCPAの備忘録

京都生まれ京都育ちの公認会計士TakahiroCPAが、会計・財務・税務を中心として日常的に感じたこと(感情の論理)、考えたこと(能率の論理)を備忘録的に綴ります。受験生を応援すると共に、専門家としての日々の修養を積み重ねます。*関係ない話のオンパレードです

 今日から下半期の101日です、①マイナンバー制度②海外からのIT消費税導入③スポーツ庁や防衛装備庁の設置④シャープ、ソニー、コスモ石油等の企業再編などが今日からの主な改革といったところでしょうか。マイナンバー制度の存在自体は人口に膾炙していますが、米国や韓国での陰惨な情報流出事故は知らない方もいると思います。特に中小企業のIT対応が喫緊の課題であり、事業リスクを背負うかどうかの分水嶺になるでしょう。



 シアトルに来て一か月が過ぎましたが、日本で普段体験できないダイバーシティを毎日経験できています。文化的ダイバーシティとしてはvegan(ベジタリアンのハード版。酪農物もダメ)やハラル食(イスラム食)が存在する一方で毎晩肉とビールを餌付けされる家庭(my家庭)が存在すること。社会的ダイバーシティとしては毎週ホームパーティをする家庭が多かったり、emergency遭遇率が高いこと(car accidentは二回その瞬間を見ましたし、救急車やパトカーは一日何回耳にするか分かりません。経済的ダイバーシティとしてはホームレスや乞食の多さ(中にはファッション乞食もいます。僕は乞食が家から出勤しているところを目撃しました)、地域的ダイバーシティとしては危険地帯では地下鉄は車を持てない最貧層が集合するため治安が悪化することや、イスラム人街や中華街、インターナショナルディストリクトといった国際人街は貧困層の集積地で治安が悪いなどなど。挙げればキリがありません。












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 さて本題ですが、アメリカに所謂風俗店があまりないのを御存じでしょうか。IncallOutcallと呼ばれる個人間取引を除き、風俗店は殆どありません(メキシコとの国境を越えた瞬間世界三大風俗街の一つ「tijana」が覗かれますが、当該地域発展の地政学的及び心理学的要因は書く必要も無いほど明白でしょう)。それもそのはず、米国ではネバダ州を除き売春はアウトローだからです。先日、アメリカで以下の趣旨の発言を耳にしました。







「自由の国アメリカでのタブーの一つは女性蔑視であり、人物や国家にnegative campaignをしたい場合は、対象の女性軽視を吹聴すればよい」







以前橋下さんが慰安婦推進ともとれる発言をしたところ目を血走らせた海外メディアの大群が大挙して日本に押し寄せた事実の要因はここにあったのです。日本では(主として男性間で)風俗トークで盛り上がり距離を縮める場面を稀に観察できますが、アメリカではその発言の瞬間、築き上げた異国での人間関係の全てを壊すきっかけにもなりかねません。また、商慣習的に日本ではキャバクラ等の経験を社会勉強と位置付けている部分も観察されます。女性の方の中にははなぜ日本のサラリーマンは所帯を持ってもキャバクラ等の風俗(性風俗以外の中心に)に行くのかと疑問に持つ方もいらっしゃると思うが、日本の商慣習上、例えば部下が大きなミスをした時キャバクラにでも連れていき明日から頑張れよ!と励ます場面や、単純にconfidentialなビジネスの密談の場として暗躍しているから、サラリーマンとして必要な能力の一つなのとなっているのであります(逆に、女性上司だとそういうことが出来なという点は女性が日本企業で出世しにくい理由の一つ)。

それでは、日本における風俗産業の発達は性犯罪の抑制に繋がっているかもしれませんが、これほどまでの日米文化格差の理由はどこにあるのでしょう。






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かつてノーベル経済学賞受賞者クズネッツはこういいました。「世界には先進国、途上国、日本、アルゼンチンの4つの国しかない」。趣旨は、先進国途上国は歴史的に固定で、唯一の例外が途上国から先進国に成り上がった日本とその逆のアルゼンチンであるから、研究対象として大変興味深いということにあります。それほど、大戦後途上国から先進国に変遷することは歴史的異常性を孕んでいるのです。

 しかし、それほど異常な変化を遂げるには異常な性質が存在したからには他ならず、その異常の一つが「male chauvinism(男性優越主義)」です。世界的に異常な性格差が存在し、度々海外から「日本は男性優越主義をjettisonしろ」と攻撃されます。そうです、欧米文化にとって女性蔑視は格好の攻撃材料になるからです。このdisadvantageを解消しようと安倍首相は新三本の矢で子育て支援に触れましたし、森日本公認会計士協会会長もこれから育児方面の被監査領域にビジネスチャンスがあると講演で仰られていました。一方で、「女性の社会進出」→「経済的自立による晩婚化・非婚化」→「人口減少による日本経済の弱体化」というカタストロフィーが見えなくもないですが、やはり経済どうこう以前に「差別」であり「暴力」であるものは抹消するのが世論の行き先でしょう。株価も景気も世論も、証券用語でいうと、専門家でなく大多数のぼんやりとした大衆心理「ハーディング(群集心理)」が大きな動力であります。



 「暴力」と書きましたが、女性蔑視は暴力です。ヨハン・ガルトゥングという平和学の第一人者であるノルウェー人社会学数学者は、暴力には「直接的暴力」「文化的暴力」「構造的暴力」の3つの種類があるとしました。イラク戦争の現地での暴力が直接的暴力、イラク戦争を決定した米国背景社会が文化的暴力、そして日本における女性のような構造的異常により虐げを構造的暴力と呼びます。先日国税庁が日本における性別平均年収が発表しましたが、それによると男性の平均年収は511万円、女性の平均年収は272万円でした。私自身、就職活動や社会人としての一般事業会社の人事体系、そして実際の周囲の人間の待遇を通じ、そして当該年収事実を通じ、いかに日本人女性が構造的暴力に苛まれているか徐々に理解してきました。また、就活生が「でもわたし女性だから、、、日本ってそういう社会なんだなって、、、」といってる局面に数多くエンカウントしました。これこそがOLと水商売のダブルヘッダーをこなす女性はいる一方で、リーマンとホストの二刀流をこなす男性の話を聞かない理由でしょう。

 確かに短期利益至上主義の観点からは、性別間の最大の社会的相違である「出産」に関連して育児休暇等で支出しなければならない費用は多大に見えます(昨今の税優遇政策のみでは限界があります)。また、実際に自身がクラスターリーダーであったとしてプロフィットセンターで各部門にノルマが示達された場合、時短勤務の女性が定時で帰ればどう思うでしょうか。その一方で日本は「学歴、正社員、結婚」を三種の神器とする「安定」の一神教であり(所得倍増計画及び国民皆保険等の結果、一億総中流という意識の普及が昭和の国民生活白書で陳述されました)、現実問題結婚していることが出世に影響する世の中が醸成されてきました。しかし、長いスパンで事業体経営を俯瞰した時、これからの更なる「個人の尊重拡大による、環境・ダイバーシティ・人権にうるさい型社会」を見据えて事業体の構造改革をすることは悪くないでしょう。世界屈指のIT企業であるヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard、通称HP)が環境配慮のため自主的に設計を見直したら結果的に費用削減で利益UPしステークホルダーの意識も向上したという例もあります。

 男女不均等の経済的最懸念事項は、現在外国からのインフローで成り立っている成長が今後投資対象としてネガティブ・スクリーンされる可能性があるというところでしょうか。ロイヤル・ダッチ・シェル社のナイジェリアでの事件に対する世論による企業価値への悪影響のように、事業リスクとして認識可能です。例えばEUには「欧州CSR原則」があるほど人権先進的ですが、今日のグローバル展開する事業体は思わぬところで(本社や地域統括会社から目が届きにくい末端の在外業務事業体で)足元を掬われるという可能性もあるでしょう。

 これを改善するには①一定規模企業への女性役員比率や女性雇用比率の細かい設定を法律が担当すること、そして②労基順守状況監督の厳格化があげられるでしょう。また、企業が内から見えにくい部分に対し問題発見を望む場合、元国連事務総長特別代表でハーバード大学のジョン・ラギー教授が「国連ビジネスと人権に関する指導原則」の中で示した『人権DD(デューデリジェンス)』という選択も確かな助けとなるでしょう。

 しかし、一律にそうした性比率の改善を促したところで、①そのおかげで実際に能力のない人材が昇進した、という男性に対する逆差別の問題もあります。従来までも多くの議論がなされてきた分野ではありますが、やはり日本人の骨や血までに刻み込まれている日本の社会的構造を変革するのはボトムアップでは難しく、長期的展望を織り込んだ国家の前衛的なトップマネジメント能力が問われます。これまで株価的には一定の成果をあげてきた安倍政権です、今回の新三本の矢で財政金融といったマクロ経済学のケインズ理論に裏付けられたマネー出動政策から脱皮したことが株価的にどのような結果を招くのは想像に容易くないですが、一国民として彼の政治家としての英姿を期待したいところであります。決して不完全な規制の流産でなく、十全で胆力を練られた改革であることを期待します。あと、人材業界はビジネスチャンスかもですね。

 さらに、②計量経済学でいう「内生性」の問題があります。内生性とは端的に言うと『説明変数と誤差項との相関性』を指し、本件では女性役員比率上昇で業績上昇を見込めるデータがある一方で、女性役員比率40%を達成したノルウェーは結果的にトービンのq(企業価値を示す関数の一つです;時価総額/推定資本再取得価額)が12.4%下落したように複数の相関事実に矛盾を孕んでいることを示します。諸条件が異なる中で国際比較をすることが有意かは疑問ですが、企業価値と女性役員登用のグラフは逆V字のような相関係数を示すのかもしれません。何れにせよ裏付ける研究データの完成を待たなければなりません。


 

 今回はダイバーシティのジャンルで書きましたが、いつかPwCの土橋さんのような(http://www.pwc.com/jp/ja/advisory/services-consulting/people-change-management/column/vol2.html )高質な記事を書けるようなプロフェッショナルな専門家になるために、更なる日々の修養を集積していきたいです。

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