離婚が成立した。
4回目の調停で、離婚成立。
比較的早い方だ。
妻が家を出て、9ヶ月。調停が始まってからは5ヶ月。
短期間での成立。
喜ばしいことなのかもしれない。
最後に一同が同じ部屋に会した。
真ん中に裁判官。その左右に調停員。おそらく書記の方々。
向かい側には、私と味方の弁護士。
そして、私を散々苦しめた例の弁護士。
私のすぐ横に座っていた。
妻はいなかった。
きっと私と同席することを嫌ったのだろう。
裁判官が成立の条件を読み上げた。
内容は事前に確認していたから、その復唱などどうでもよかった。
ただただ、左横に座っている弁護士が憎かったし、この場で叫び出したい気分だった。
裁判官がずっと話しているが、内容が頭に入ってこない。
まるで自分が自分でないような感覚だった。
よろしいですか?
そう聞かれた気がした。
はい…。
機械的に答えるしかない。
では、これで終了です。
お疲れ様でした。
………。
は?!
え?!
これで終わり?
これで離婚が成立したというのか?
これまで、散々もめてきた結果がこんなあっけないものなのか。
一瞬何がなんだかよくわからなかった。
何がお疲れ様だ。
そんな言葉で片付けるな。
そんな無機質な言葉で、決着をつけようというのか。
私はもっと、ちゃんとした話し合いがしたかった。
妻と対面して、きちんとお互いの気持ちを話し合い、これからのことに関して、真剣に話がしたかった。
それなのに、弁護士が間に入り込んで、我が物顔で全てをややこしくした。
最後にもう一度、きちんと妻の顔を見て、最終的な意思を確認したかった。
本当にこれでいいの?
これが2人にとって、子供たちにとって最善の方法なの?
これ以外に本当に方法はないの?道はないの?
そう、妻に聞きたかった。
これまでの2人の軌跡を、思い出を辿れば辿るほど、自分にはこれが1番とは思えなかった。
2人には、その絆があると思っていた。
生まれ変わっても一緒にいよう。
人生の最後はあなたに看取ってほしい。
どんなときでも、一緒にいよう。
たくさんの誓いごとをした。
そんなことも、妻は忘れてしまったのだろうか。
部屋にいた人たちが次々に出て行った。
自分もよくわからぬまま、部屋を出た。
何の感慨も湧かない。
何も考えられない。
ただ、何か疲れたな、と思っただけだった。
味方の弁護士と一言二言話をして、家庭裁判所をあとにした。
もっと、何かこう、気持ちに響くものがあるかと思っていたが、全てが終わったあとの気持ちは、考えていたそれとは程遠いものだった。
普通はどういう気持ちを持つのだろう。
晴れて独身に戻って、晴れやかな気持ちになるのだろうか。
家族と離れたことを悲しむべきなのだろうか。
気持ちの整理がつかない。
今後、自分は何のために生きていくのだろう。